抄録
【はじめに】変形性膝関節症(以下OA)において、人工膝関節全置換術(以下TKA)は多く施行されている外科的治療方法である。術後の関節可動域(以下ROM)に対する報告は多く、さまざまな要因が影響していると考えられている。今回、femorotibial angle (以下FTA)の変化も術後膝ROMを左右する要因ではないかと考え従来の項目に加え、比較・検討したので報告する。
【対象】両側OAと診断され、平成15年5月から9月までに当院で両側TKAを施行された女性10名、20関節を対象とした(年齢68歳±8歳:平均±標準偏差)。使用機種はFlexible NICHIDAI Knee(以下FNK)CR タイプ、全例セメントを使用、PCLを温存している。対象に重篤な既往、合併症のないものとし、研究の同意を得た。
【方法】術前と退院時(以下術後)に膝屈・伸筋力、膝屈・伸ROM、FTA、を測定し統計処理により術前・後の相関係数を求め、検定を行った。また、術前FTAを180°未満群(A群)と180°以上群(B群)に分け術後膝屈曲ROMを比較した。筋力はMMTコマンダー(日本メディックス社製)を使用し、端座位にてそれぞれ3回測定しその平均値を下腿長と体重で補正し膝関節屈・伸筋力(Nm/Kg)とした。FTAは膝正面単純X線像上で測定した。
【結果】術前膝屈曲ROMは116.8±18.6°、術後膝屈曲ROMは114±12.9°であり、差は認められなかったが、各個人間における、正の相関(r=0.7,p<0.001)が認められた。術前膝伸展ROMは10.5±9.0°、術後膝伸展ROMは4.3±5.1°であり、有意差は認められなかったが、各個人間における相関(r=0.66,p<0.001)が認められた。年齢と術後膝屈曲ROMにおいて、負の相関(r=-0.63,p<0.05)が認められた。FTAは術前182.7±7.8°、術後174.1±2.9°であり有意に減少した(p<0.001)。術後膝屈曲ROMはA群123.1±16.2°、B群は108.3±7.1°でありA群において有意に大きかった(p<0.001)。術前膝筋力と術後膝ROM、では相関関係は認められなかった。
【考察】FNK CRタイプにおいても諸家の説と同様に術後ROMは術前膝ROM・年齢と相関していた。今回術前FTAが180°以下の症例では術後膝屈曲ROMが良好であった。これより、術前膝ROMが不良、高齢、FTAが180°以上の症例では、術後膝ROMが低下する可能性が高い事が示唆された。今回の結果ではFTA180°以上の群はROMが低下していたが、術式など様々な他の因子が影響を及ぼしていると考えられ、今後の検討課題である。