理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 956
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骨・関節系理学療法
体幹回旋と胸鎖関節の動きについて
水平面観察よりの考察
*比嘉 裕安里 和也仲田 多津子小川 晃生松浦 淳子川端 哲弥泉水 朝貴平良 進又吉 みどり毛利 光宏
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抄録
【目的】直接的な大きな外力が加わるわけでもない非外傷性関節障害は、原因を職業や生活習慣などの外的な要素に加え、姿勢や体型、また動作など内的要素の影響も大きく受ける。特に肩は胸郭上にある浮遊関節であるため容易に他から左右され易くある。今回は、非外傷性肩関節障害者の体幹回旋と胸鎖関節との関係を内的要素のひとつとして捕らえ、その特徴の探究を目的とした結果に対し若干の考察を加え報告する。
【対象】本研究に対して十分な説明を行い同意が得られた、非外傷性肩関節障害を有する男女13名。内わけは右障害10名、左障害3名。18歳から79歳で平均年齢46.5±18.7歳とした。
【方法】自然坐位において水平面上より(前方が12時の方向とし、障害側への後方回旋を+とした。)ビデオカメラで体幹の回旋とそのときの胸鎖関節の動きを撮影し、画像処理ソフトScion Imageにて分析した。静止坐位姿勢を基準とした際の、身体回旋の障害側と反対側の差を検討した。検討項目は、1)骨盤回旋角度 2)体幹回旋角度 3)体幹回旋の移動成分 4)体幹回旋時の胸鎖関節の角度をそれぞれ求めた。3)に関しては、X.Y座標上で胸骨投影点を求め、統計学的処理はt検定を用い優位水準は5%未満とした。
【結果】基準の静止坐位姿勢は、検討項目全てにおいて障害側、反対側で回旋の大きさに優位差は認められなかったが、体幹回旋の2)で特に後方回旋角度は、障害側が32.0±7.7°で反対側26.5±6.8°と優位差を認めた。また、4)は障害側の後方回旋時の障害側胸鎖関節が-1.2±5.2°示し、反対側の後方回旋時の障害側胸鎖関節が5.2±4.3°と優位差が認められた。他の項目に関して優位差は認められなかった。
【考察】今回の結果から、非外傷性肩関節障害を有する者の身体の捻れは、静止坐位上ではまちまちであるが、動作として体幹の捻れ方は障害側に大きく捻れ、また障害側の胸鎖関節は、体幹が障害側に後方回旋すると屈曲し、反対に障害されていない側に後方回旋すれば伸展してくる。その胸鎖関節の角度は水平外転の方が大きいことが分かった。理由に関しては、上肢からの影響や体幹への荷重、また下肢からの影響など他にも要素は多く、今回だけでは結論づけられないものだと考えている。しかし結果のように、ある一方向へしか動けない、特異的であるということは、動作許容範囲が狭く、多様な動作に対応できず、それが障害を引き起し易くするのではないだろうかと考えている。今回、症例数や両側性の障害、また他の面での検討も今後の課題として考えている。
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© 2004 日本理学療法士協会
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