抄録
【目的】
筋紡錘は固有感覚の制御において主要な役割を果たす器官である。筋疲労で固有感覚が低下するという報告はなされているが、重錘負荷により筋活動量を変化させた場合の影響については明確にされていない。今回、下腿に加える重錘負荷の違いによって膝関節の位置覚がどのように変化するかを報告する。本研究の仮説として負荷重量の増加に伴い位置覚の精度も増すと考えた。
【方法】
対象は膝関節に特別な既往のない女性6名(平均年齢23.2歳)とした。測定は端坐位で行い、利き脚を用いた。対象の大転子、外側上顆、外果に直径20mmのカラーマーカーを貼付し膝関節屈曲角度測定のポイントとした。位置覚の測定として開始角度は膝屈曲90°に統一し、目標角度は30°とした。対象はアイマスクを装着し、予め測定しておいた膝屈曲30°の位置まで自動的に膝関節を伸展していく。検査者はその位置で5秒間停止させ再び開始角度に戻させる。次に対象は再度、膝関節を伸展していき、覚えた位置になったと判断したら停止する。これをデジタルカメラで撮影しこの画像からScion Imageを用いて再現角度を読み取り目標角度との誤差を求めた。負荷は重錘ベルトを下腿遠位に巻き0kg、2kg、4kgの3種類で各5回測定した。
【結果】
0kgの誤差(平均±SD)は1.57±1.16 °、2kgは 1.67±1.36°、4kgは 2.04±1.36°であり、Kruskal-Wallis testを用いた負荷重量の違いによる差の検定ではp=0.17であった。また4kgの重錘負荷では再現角度が目標角度を越える(overshoot)傾向が0kg、2kgと比較すると強かった。
【考察】
今回、負荷重量が増加することによって筋紡錘の興奮が高まり結果として位置覚の精度が増すと考えたが、差を見出すことはできなかった。しかしながら負荷重量の増加に伴い有意差はないものの誤差は大きくなった。0kgと2kgの重錘負荷ではovershootは約50%にみられたが4kgでは約75%がovershoot であり、負荷重量が増加すると健常膝では過大に再現することが考えられた。
我々は、先行研究において健常膝を対象に膝屈曲90 °の開始角度から30 °まで他動的に動かし、その角度を他動的に再現させる位置覚測定を行ったが、誤差は4.88±3.05 °であった。今回の自動運動による位置覚測定の結果、誤差は全ての負荷重量で明らかにそれよりも小さかった。このことから自動的な大腿四頭筋の収縮により筋紡錘の興奮性に変化がおこったことも推察された。
【まとめ】
重錘負荷を増加させると誤差は増加する傾向がみられた。自動運動による位置覚測定では他動的な位置覚測定と比較して、誤差が小さかった。今後は、さらに負荷重量を増加させたときの位置覚の変化を明らかにしていきたい。