抄録
【目的】下肢の変形性関節症(以下OA)の治療法として、末期ではTHAとTKAが施行されることが多い。今回我々は、患者が手術を受けることを決意した理由について調査し、THAとTKAにおける共通点と相違点を検討したので報告する。
【対象】平成6年から平成13年の8年間に、当院では股OA及び膝OAに対して、 THA56例(男9、女47)、TKA59例(男6、女53)、合計115例が施行されていた。郵送法によるアンケート調査を実施し、THA群43例(男8、女35)、TKA群41例(男5、女36)の合計84例から回答が得られ、回収率は73.0%であった。アンケートでは、手術を受けることを決意した理由(複数回答可)、その第1の理由、術後の満足度などを調査した。
【結果】患者の属性をTHA群、TKA群の順で示す。年齢(66.7、71.7)歳、身長(150.7、148.9)cm、体重(55.2、59.1)kg、BMI(24.3、26.7)、疼痛出現から手術までの期間(66.1、99.8)ヶ月。手術を決意した理由は上位から、THA群で1)歩行困難(93.0%)、2)関節痛(74.2%)、3)夜間痛(48.5%)であり、TKA群では1)歩行困難(97.6%)、2)関節痛(73.2%)、3)関節可動域制限(68.3%)、4)下肢の変形(34.1%)だった。そのうち手術を決意した第1の理由はTHA群で歩行困難(48.8%)、夜間痛(23.3%)、TKA群では歩行困難(53.7%)、関節痛(17.1%)であった。TKA群で関節可動域制限、下肢の変形を最も大きな理由に挙げた人は2%と少数であった。満足度に関しては、THA群で1名が不満と回答しただけだった。
【考察】下肢の荷重関節に対して最も大きな障害は歩行困難であり、これが手術を決意した理由の第1位であった。また、歩行障害の原因となる疼痛も手術を決意した重要な要素となっていた。滑膜炎などの炎症性疾患は夜間痛の原因になると言われており、これを合併しやすい股OAでは手術までの期間を短縮させている可能性があると思われる。一方、関節可動域制限、下肢の変形は手術を決意する決定的な要素とはなっていなかった。人工関節置換術は疼痛の除去と歩行機能の改善に極めて有効であり、そのため患者の満足度も高くなったと考えられる。術後に適切な理学療法を行うことにより、更なる歩行機能の改善と患者の満足度の向上に役立つと考える。