抄録
【はじめに】変形性股関節症に対する全人工股関節置換術(以下、THAとする)は治療法として確立されたものであり、多くの変形性股関節症などの患者が手術・治療をうけている。本症例は小児麻痺が診断され、左下肢に麻痺があり、X-ray上では左骨盤と左下肢に成長障害が見られていた。また、10代では側弯症の手術を受けていた。今回、支持脚である右股関節にTHAを施行し、理学療法を行った。その経験を報告する。
【症例】54歳女性、右は進行期、左は初期の亜脱性股関節症だった。支持脚は右下肢であり、階段昇降時は右下肢を支持脚とした二足一段昇降を行っていた。主訴は右下肢の疼痛であり、Needは独居可能とバス旅行に行くことであった。生後6M時に小児麻痺と診断、16歳時には左足関節外果形成術、17歳時には側弯症に対する腰椎固定術を行っていた。脚長差が7cmと大きく、支持脚に負担がかかったため歩行困難となり、当院を受診した。H15年7月1日に右THAを施行、8月27日に退院となった。
【経過と結果】股関節機能評価は、術前の48点から退院時には81点へと改善した。術後の支持脚は筋力が弱く短い左脚となり、非術側の片脚立位がとれないことと上肢の支持性が不十分であることから、transferは全介助となった。そこで、テレビ回転台と補高板を用いてtransfer-boardを製作し、移乗動作時に用いた。主訴は右下肢の疼痛、Needは独居が可能ということであった。主訴は手術により改善し、Needは家族の協力を得る体制を整えた。ROMは股関節の伸展と外転に大きな制限が見られたが改善した。筋力は両脚とも弱く、MMTでは抗重力運動が不可能なレベルで、片脚立位は左右ともに不可能だった。術後3日目にW/C許可となったが、脚長差が大きく左の片脚立位が取れないため自立できず、約10cmの回転補高台を製作し使用することで自立となった。術後1週から1/3WB、2週で1/2WB、3週でFWBとすすみ、部分荷重時はtilt-tableを、FWBでは4点式歩行器を用い訓練を行った。加えて、左右立脚時に骨盤の傾斜を正常な位置に近づけることを目的とし、4cmの歩行靴を製作した。また鏡を見ながらの静止スケーティングを行い、歩行時に重心をよりスムーズに左右へシフトすることが可能となった。その後、T-caneを用いた歩行や階段昇降訓練とすすみ、8/27退院となりました。筋力は全体的に向上が認められ、抗重力運動も可能となった。術前は独歩で、右立脚期はTrendelenburg徴候が、左立脚中期ではDuchenne徴候が見られた。また臀部を突き出し、左右に大きく上体を振ったあひる様歩行が見られた。術後には右手のT-cane支持で歩行し、立脚中期の症状は軽快した。階段昇降は右を支持脚とし、2足一段で可能となった。