抄録
【目的】足部には、歩行やランニングで衝撃を吸収する作用がある。この衝撃吸収作用は足部の剛性を低下させることで得られるが、床反力の大きい降り斜面で平地と同様に足部が運動し、衝撃吸収作用が機能するかは明らかではない。今回、降り傾斜での足部機能を知るために、平面と降り斜面で同一足関節肢位における足部アーチの形状を比較した。
【対象・方法】対象は、測定下肢に外傷の既往のない男性2名、女性2名、合計4名4肢である。全て右下肢で測定した。
a.第1中足骨頭、b.舟状骨粗面、c.踵骨隆起前端、d.脛骨内側プラトー中央、e.脛骨内果にランドマークを設置し、右上肢を壁につけてバランスをとり、測定下肢で片脚立位にさせた。足先と膝の方向を一致させ、母趾球荷重にさせた。骨盤を回旋させずに股関節と膝関節を屈曲し、足関節を背屈させた。床面からの垂線とdとeを結ぶ直線のなす角度を足関節角度とし、床面の傾斜0度と降り20度のそれぞれで足関節0度と背屈10度の足部内側をデジタルビデオで3回ずつ撮影した。そして、∠abc(内側縦アーチ)、∠cab(前足部)、∠bca(後足部)について3回の平均値を算出し、2つの床面で比較した。
【結果】足関節0度:内側縦アーチは床面による角度の差が全対象で1度未満であった。全対象で前足部は降り斜面の方が大きく、後足部は降り斜面の方が小さかった。
足関節背屈10度:全対象で内側縦アーチは降り斜面の方が小さく、前足部は降り斜面の方が大きかった。後足部は床面による角度の差が全対象で1度未満であった。
【考察】水平面に対して降り斜面では、足関節0度、背屈10度のいずれにおいても前足部の角度が増加していた。この結果から、降り斜面においては、内側縦アーチの頂点である舟状骨が前方あるいは前上方へ移動することが示唆された。降り斜面では、距骨に伝わる荷重負荷の前方への分力が水平面より強いため、接地した母趾球と距骨との間にある舟状骨が前方へ移動したと考えられた。この現象により、足部アーチには、降りの傾斜によって距骨が前方に押し出される力を吸収する作用があると推察された。
一方、水平面に対して降り斜面では、内側縦アーチの角度が足関節0度で変わらず、背屈10度で少なかった。これは、降り斜面で足関節背屈時に内側縦アーチが降下し難くなることを示しており、床反力に対する衝撃吸収作用が水平面に比べて減少すると考えられた。
【まとめ】下肢に外傷の既往のない男女各2名を対象に、平地と降り傾斜での足部の形状を比較した。その結果、全対象で同様の傾向を示し、水平面に比べて降り斜面では前足部の角度が大きく、内側縦アーチあるいは後足部の角度が小さくなった。