理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 468
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内部障害系理学療法
糖尿病ウォークラリー参加者の運動前後の血圧
*塩本 祥子蘇馬 隆一郎古矢 泰子荒木 茂片田 圭一三輪 梅夫
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抄録

【はじめに】有酸素運動がインスリン抵抗性の改善に有効であることは周知の事実であり,歩行は手軽で導入しやすいその代表的運動である。石川県では平成14年より糖尿病ウォークラリーを開催しており,ボランティアとして理学療法士も参加し運動療法の効果と方法を説明・実施して啓発活動を行っている。今回,平成15年10月5日に開催されたウォークラリーにて,その運動量が血糖値・血圧に与える影響を看護師の協力のもと測定し,比較検討する機会を得たので報告する。
【対象及び大会概要】対象は糖尿病ウォークラリーに参加し,調査に同意を得た89名(男性40名,女性49名)・年齢60.9±10.9歳(27歳~79歳)とした。なお参加者は事前に主治医の許可を得て参加していた。コースは全長2.3Km高低差10mで,平均コースタイムは53分であった。天候は晴れ,湿度60%,気温16.7°C(12~21°C)であった。
【方法】血糖値・血圧の測定は看護師によりウォークラリー前後に行われ,測定機器として血糖値はグルテストエース(三和科学社製),血圧は水銀血圧計を用いた。運動前後の血糖値・血圧のデータを比較検討し,平均値の差の検定にはt検定を使用し,危険率5%未満を有意な差とした。
【結果】運動前の血糖値は平均162.9±62.7mg/dlであり,運動後の血糖値は平均128.5mg/dl±47.3mg/dlと有意に減少していた。血圧については運動前の血圧測定で48例(53.9%)が高血圧(以下高血圧群)を示した。その内訳は軽症高血圧が34例(70.8%),中等症高血圧13例(20.1%),重症高血圧1例(2.1%)であった。高血圧群の運動前平均血圧は収縮期血圧が155.2±11.2mmHg,運動後は143.3±18.6mmHgと有意に減少していた(P<0.01)。運動前拡張期血圧は83.4±9.9mmHg,運動後は79.2±10.1mmHgと有意に減少していた(P<0.05)。運動前非高血圧者(以下非高血圧群)の運動前平均血圧は収縮期血圧が123.4±10.6mmHg,運動後は123.7±18.2mmHgであり,運動前拡張期血圧は75.3±10.1mmHg,運動後は72.7±11.2mmHgといずれも有意な差は認められなかった。高血圧群,非高血圧群の年齢に有意な差は認められなかった。また,運動後血圧が10mmHg以上上昇した症例が15例(16.8%)あり,そのうち5例が高血圧群であった。
【考察】ウォークラリー前後で血糖値・血圧を測定した結果,高血圧の合併例が48例(53.9%)に認められた。平均値では高血圧群,非高血圧群とも血圧の上昇はみられず今回のウォークラリーの運動強度は適切であったと考えられる。しかし運動後血圧上昇がみられた例もあり,安全な運動を行なうためには参加者個々の病態を把握し,より適切な運動強度を検討していく必要があると考えられた。また,今後高血圧群・非高血圧群での病歴・薬物療法・運動の日常性などを調査し,検討する必要があると考える。

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© 2004 日本理学療法士協会
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