理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 469
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内部障害系理学療法
高齢糖尿病患者の運動習慣とHbA1cとの関連性について
*増井 正清高井 悦子達川 仁路熊谷 真紀子
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キーワード: 糖尿病, 運動習慣, HbA1c
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抄録

【はじめに】高齢糖尿病患者は運動習慣が定着しにくい傾向にあり、さらに加齢に伴い耐糖能が低下することから血糖コントロールが困難な場合が多い。そこで今回、高齢糖尿病患者の運動習慣についてアンケート調査を行い、若干の知見を得たので報告する。
【対象】当院糖尿病友の会総会参加者85名のうち、65歳以上の59名を対象とした。
【方法】自己記入式アンケートにて、年齢、身長、体重、運動頻度、運動時間、運動種類、運動が継続できている理由等について調査し即日回収した。20分以上の運動を週に3回以上継続している高齢糖尿病患者(以下、運動継続群)と運動が週に2回以下の高齢糖尿病患者(以下、運動非継続群)に分け、体格指数(BMI)、糖化ヘモグロビン(HbA1c)、運動種類等を比較検討した。
【結果】アンケート回収が可能であった高齢糖尿病患者は、54名(男性30名・女性24名)であり全て2型糖尿病患者であった(回収率91.5%)。そのうち運動継続群は29名であり、平均年齢71.7±3.9歳、平均身長159.3±8.7cm、平均体重58.0±7.2kg、発症後の平均経過年数は13.5±10年である。
 運動非継続群は25名であり、平均年齢72.3±4.8歳、平均身長157.2±9.9cm、平均体重58.7±6.3kg、発症後の平均経過年数は13.8±12.1年である。運動継続群のBMIは22.9±2.8、HbA1cは7.1±1.0であり、運動非継続群のBMIは23.9±3.5、HbA1cは7.5±0.8であった。
 運動継続群の運動頻度は、1週間に5±1.5回で、運動時間は45±27.9分であった。運動非継続群の運動頻度は、1週間に1.3±1.3回で、運動時間は17.3±15.6分であった。
 運動継続群の大部分は散歩のみであったが、ゲートボールなどの軽スポーツや清掃ボランティア等に参加している者(以下、活動群)が7名(24.1%)おり、HbA1cは6.5±0.9であった。活動群を除いた運動継続群のHbA1cは7.3±0.9であり、活動群のHbA1c6.5が有意に低かった(P<0.05)。なお、運動継続群と運動非継続群のHbA1cおよび、活動群を除いた運動継続群と運動非継続群のHbA1cには有意差が無かった。
【考察】運動療法を継続させるためには、運動習慣をいかに定着させるかがポイントになる。一般的な運動処方としては、いつでも、どこでも、一人でもできる手軽な運動として歩行がよく選択されている。しかし今回の調査では、運動継続群の多くが行っている散歩では運動強度が低いためかHbA1cの値は運動非継続群と比較し有意差は見られなかった。しかし、活動群のHbA1cは良好であった。よって、高齢者の場合は散歩などの個人レベルでの運動だけでなく、集団での軽スポーツやボランティア等への参加を促すことで、活動的な生活リズムが作られ運動習慣が定着しやすくなり、ひいては血糖コントロールも良好となる可能性が示唆された。

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© 2004 日本理学療法士協会
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