理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 471
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内部障害系理学療法
糖尿病患者の運動継続を阻害させる要因ならびに転倒に関する調査
*由利 真上田 将之矢部 江里子堀 享一梅本 かほり
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キーワード: 糖尿病, 肥満, 転倒
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抄録

【はじめに】本邦では生活習慣と社会環境の変化に伴って糖尿病患者数が急速に増加している。糖尿病の発症危険因子には、肥満、身体的活動の低下、耐糖能異常などがあげられる。肥満度が高い程、糖尿病有病率は高くなると指摘されており、特に高齢者ではBMIが高い傾向を示したとの報告もあり、肥満の回避が重要と考えられている。また、高齢者における寝たきりは転倒による骨折が原因の1つとして報告されており、さらには転倒と糖尿病との関連も指摘されている。これらを防止するには運動習慣を身につけることが重要であるが、糖尿病患者の運動実施を阻害させる要因や転倒に関する報告は少ない。
 本報告の目的は、糖尿病に対する運動療法を経験した糖尿病患者の運動実施状況を調査し、運動継続を阻害させる要因、転倒などに関する調査を行ない、糖尿病患者に対する運動指導の一助を得ることである。
【対象と方法】糖尿病によって入院時に理学療法士による運動療法を経験した2型糖尿病患者のうち本研究の目的を理解し,同意を得られた52名の糖尿病患者を対象とした。
 方法は、アンケート用紙を自宅へ郵送し、運動の実施状況、転倒などに関する内容を調査した。アンケート結果は、65歳以上の糖尿病患者(高齢者群)と65歳未満(非高齢者群)に分けて検討した。
【結果】有効回収率は73.1%(38名)であった。なお、本研究で後述する結果については有効回答が得られたこの38名(平均年齢61.0±11.7歳、BMI25.7±4.2)について検討した。
 高齢者群19名(平均年齢70.3±3.7歳)のBMIは24.4±3.5であり、過去1年間における転倒の既往の比率(転倒率)は42.1%であった。また、非高齢者群19名(平均年齢51.7±9.2歳)のBMIは26.9±4.5であり、転倒率は36.8%であった。運動の実施頻度は、高齢者群よりも非高齢者群のほうが有意に低かった。また、運動実施を阻害させる要因として、運動するための時間がない、やる気が起きないことを理由とする傾向が非高齢者群で高かったが、知識不足、経済的理由、疼痛には両群で差はなかった。
【考察】今回の対象者は、日常生活を遂行するうえで支障となる重篤な合併症がない糖尿病患者であったが、本研究では高齢者群よりも非高齢者群のほうがBMIは高く、運動実施頻度も低かった。本研究の対象者は高齢者群だけではなく非高齢者群でも、先行研究と比べて転倒率が高い値であった。この結果はBMIが高く、運動実施頻度が低いために転倒率が高くなったとも考えられた。運動実施を阻害させる要因としては、高齢者群よりもむしろ非高齢者群のほうが運動時間のないことや運動意欲のないことを理由とする傾向があっが、今後は運動療法の知識に対する教育と実践を経験していない糖尿病患者との比較が必要と考えられた。

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© 2004 日本理学療法士協会
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