理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 470
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内部障害系理学療法
当院糖尿病教室終了者に対する退院後の実態調査
勤労者に着目して
*戸渡 敏之久野 雅彦白川 守後藤 正樹山内 克哉井上 章
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抄録

【はじめに】近年、糖尿病(以下DM)の患者指導に関するチーム医療の重要性が認識されてきている。当院では、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、臨床検査技士、歯科衛生士、理学療法士(以下PT)がチームを組み、教育が必要と診断された患者に対し、入院による8日間のDM教室を実施している。PTの担当は主に運動指導であり、運動の必要性、運動強度の設定、有酸素運動の体験など、各個人に適した運動処方を行ない、退院後もできるだけ実践出来るような運動内容を検討し指導している。そこで今回、当センターの活動対象となる勤労者に着目し、当院DM教室終了者の運動実施状況などに関する実態調査を行い、若干の知見を得たので考察を加え報告する。
【方法】カルテより基礎データー(年齢、性別、HbA1cなど)を調べ、退院後(平均7.7±0.6ケ月)の運動実施状況を郵送によるアンケート調査により実施した。回収した39名のアンケート(回収率53.4%)より、職業を持っている24名を勤労者群(男性17名、女性7名、平均年齢50.3±2.4歳)職業を持っていない15名を無職群(男性9名、女性6名、平均年齢63.3±3.6歳)の2群に分類し比較検討した。
【結果】入院時のHbA1cは、勤労者群11.6±0.4%、無職群9.1±0.7%であり、勤労者群で高かった(P<.005)。調査時のHbA1cは、勤労者群6.5±0.2%、無職群6.6±0.2%であり、入院時からの改善度は、勤労者群5.4±0.6%、無職群2.2±0.7%と勤労者群が高かった(P<.005)。運動実施状況は、勤労者群21名(87.5%)であり、無職群は皆実施していた。運動回数については、週5日以上行っている者は、勤労者群13名(54.2%)、無職群13名(86.7%)であった(P<.05)。また1日の運動時間は30分以上行っている者が、勤労者群19名(79.2%)であり、無職群は12名(80%)であった。実施運動種目(重複回答あり)については、勤労者群はウォーキング18名、筋力トレーニング、自転車それぞれ4名、ジョギング、ストレッチ体操それぞれ3名、その他であった。無職群はウォーキング14名、自転車3名、ストレッチ体操2名、その他となっており、両群に共通してウォーキング実施者が多かった。
【考察】勤労者群は、入院時のHbA1cが高値を示しており病態が重症化してから来院する傾向がみられた。しかし改善度も高くDM教室での指導や治療により、良好な血糖コントロール可能となる症例も多いと思われる。運動回数については無職群と比較すると少なく、1週間に効果的な運動を十分に実施できない者も約半数みられ、毎日の通勤や仕事の中で意識的に活動量の増加を促す方法や休憩時間に行える運動指導を強化していく必要性が示唆された。また退院後の平均HbA1cは両群とも7%以下となっており、合併症予防の観点からも有効なコントロール状態が維持できていると考えられる。さらに運動時間や実施運動種目については、多くが指導に添った内容であり、DM教室が運動を実施するための動機付けになったと推測される。

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© 2004 日本理学療法士協会
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