理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 505
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内部障害系理学療法
小児の喘息発作及び肺炎に合併した無気肺に対する肺理学療法の検討
*足立 仁志木村 公治西村 敏弘瀬津田 愛中野 博小田嶋 博
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抄録
【はじめに】
平成14年7月より、気管支喘息発作及び肺炎に無気肺を合併した当院小児科入院患者を対象に、呼気陽圧振動器具、Insentive Spirometer(I.S)と呼気胸郭圧迫法(Squeezing)を用いた肺理学療法(以下CPTと略す)を実施してきた。
 今回、退院時における無気肺の改善率、CPT実施回数を、喘息発作に合併した症例(喘息群)、肺炎に合併した症例(肺炎群)で検討を行うとともに、実施前二年間(平成12,13年)に無気肺と診断されCPTを施行しなかった入院患者(非実施群)との比較を行い、このCPTの有用性の検討を行った。
【対象及び方法】
 対象は平成14年7月~平成15年10月までにCPT処方された36例中退院時まで継続できた33例(男性18例、女性15例、平均年齢3.9±2.4歳)である。
 CPTの方法は、対象者の受け入れの状況と呼吸状態等により方法A.一日2回の頻度で、呼気陽圧振動器具もしくはIS+Squeezingを10呼吸1セットとし、6~10セット実施しながら途中咳嗽を適宜促す方法。方法B.一日2~1回、一回20~30分Squeezingを行い、可能な限り咳嗽を促す方法の2方法で実施した。無気肺改善の判断は主治医の診断に基づいた。また、過去2年間の調査は診療録の記載に基づいた。改善率の比較検討にはFisherの直接確率法を用い危険率5%以下を有意とした。
【結果】
1.CPT実施結果について
 無気肺の発生部位は、33例中右中葉25例、右上葉3例、左舌区1例、左右複数の無気肺4例であった。CPTの方法は、方法A.が19例、方法B.が14例であった。CPT実施日数は、5.0±2.3日、無気肺診断日より退院もしくはCPT終了までの日数は7±2.9日であり、入院期間中に無気肺改善と診断された例は33例中26例(79%)であった。基礎疾患別では喘息発作群22例中18例(82%)が改善と診断された。肺炎群では9例中6例(67%)が改善と診断された。
2.CPTの有用性の検討
 非実施群は、52例(男性23例、女性29例 平均年齢4.7±3.3歳)であり、入院中の無気肺改善例は52例中20例(38%)で、CPT実施群より有意に改善率が低かった(P=0.003)。
 基礎疾患別では、非実施群の喘息発作群での改善例は29例中15例(52%)であり、CPT実施群より改善率が低かった(P=0.025)。肺炎群では20例中5例(25%)であり、CPT群より改善率が低かった(P=0.043)。
【まとめ】
 今回の検討で、現在行っているCPTが合併する無気肺の改善に有用であることが考えられた。しかし残存例7例中4例は、1歳児であり、このような乳幼児に対してのCPTの方法・頻度・吸入療法と実施のタイミング等の再検討を行う必要性を感じた。
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© 2004 日本理学療法士協会
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