抄録
【目的】
当院の総合周産期センター開設(2000年10月)以降、NICUにおける呼吸理学療法に理学療法士が積極的に関わっている。2003年「NICUにおける呼吸理学療法ガイドライン」が作成されたが、、NICUにおける呼吸理学療法は各施設とも統一されたプロトコールがなく、安全性や有効性について不明な点が多い。今回、当院の呼吸理学療法プロトコールに基づき、理学療法士が施行した無気肺に対する専門的な呼吸理学療法の有効性と安全性について後方視的に検討した。
【対象】
当院の総合周産期母子センター開設前後に、無気肺が発生した症例において、理学療法士が介入した群と介入しなかった群について無作為かつhistoricalに検討した。
理学療法士非介入群(A群)14例:極低出生体重児8例(平均在胎週数:26週0日±11、平均出生体重:834.1g±291.6)、その他6例(平均在胎週数:37週4日±25、平均出生体重:2755.1g±610.9)。
理学療法士介入群(B群)14例:極低出生体重児8例(平均在胎週数:26週5日±16、平均出生体重:857g±245.6)、その他6例(平均在胎週数:37週5日±9、平均出生体重:2591.7g±206.4)。
【方法】
B群の呼吸理学療法は主に排痰体位、呼気圧迫法、バック換気、気管内吸引を施行した。A群とB群における無気肺の改善日数をWelch’s T検定で比較検討した。また、B群における頭蓋内出血と肋骨骨折の発生について調査した。
【結果】
A群・B群の臨床的背景に有意差ははなかった。
A群:極低出生体重児(無気肺発生数18回)無気肺改善平均日数27.7日±28、その他(無気肺発生数6回)無気肺改善平均日数15.8日±13.5。
B群:極低出生体重児(無気肺発生数26回)無気肺改善平均日数4.7日±10(1~48日:2日未満改善20/26回)、その他(無気肺発生数8回)無気肺改善平均日数1.1日±0.1。
極低出生体重児群、その他の群において理学療法士介入群が有意に無気肺改善の日数が短かった(P<0.01)。
理学療法士介入群において頭蓋内出血・肋骨骨折の合併症はなかった。
【考察】
NICUにおいて理学療法士が関わり無気肺に対する専門的な呼吸理学療法を施行した場合、有意に短い期間で無気肺の改善が認められ、副作用もみられなかった。