理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 539
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内部障害系理学療法
当院における心疾患患者の理学療法について
*松山 博文下之園 英明加藤 裕子杉原 建介今井 保
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キーワード: 心疾患, 理学療法, 運動負荷
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抄録

【はじめに】 心疾患患者の多くは急性期治療時にしいられる安静臥床や長期間の心不全状態により運動機能に何らかの支障をきたしている場合が多い。この運動障害の改善を目的とした理学療法を行う際、その病状に応じた運動負荷方法や運動負荷量の選択とその安全な実施は必要不可欠といえる。今回当院における心疾患患者の理学療法実施状況について報告する。
【方法】 対象は2002年4月1日から2003年3月31日までに当院内科より理学療法依頼のあった心疾患患者18例(男性6例、女性12例)である。年齢は26歳から98歳で平均年齢は74.8歳であった。診断名は急性心筋梗塞6例、心不全12例(拡張型心筋症3例、うっ血性心不全2例、高血圧性心不全1例、心タンポナーデ1例、その他5例)であった。開始時の運動能力は、安静臥床1例、ギャッジアップ90°4例、立位5分3例、50m歩行3例、100m歩行1例、200m歩行5例、500m歩行1例であった。
 開始ステージは内科医師の心機能評価により、当院の心筋梗塞・心不全ステージ表に準じて決定され、運動療法施行時のリスク管理として必要なモニター項目と訓練中止基準を確認し理学療法が施行された。負荷量のステージアップは、主治医による運動負荷試験中の、血圧・脈拍・心電図・酸素飽和度・自覚症状(Borg指数)の結果により判断された。エルゴメーター使用にてランプ負荷試験可能となれば、ダブルプロダクト・乳酸値測定にて嫌気性代謝閾値(AT)を求め、ATの80%を運動療法の負荷量とした。以後定量負荷での理学療法を施行した。
【結果及び考察】 訓練中事故はなく、入院中14例は改善し、4例は変化が無かった。転帰は自宅退院が12例でその内外来継続が6例、転院は2例、死亡は4例であった。死亡4例には、ステージ改善2例、不変2例が含まれていた。終了時(死亡例は最高ステージ)の運動能力は、ギャッジアップ90°3例、立位5分1例、50m歩行1例、100m歩行2例、200m歩行2例、500m歩行1例、マスター負荷試験(終了ステージ)可能例は8例であった。また、マスター負荷試験が可能であった症例の平均年齢54.3歳であり、不可能症例の平均年齢82.8歳と比較し、有意に低かった(p=0.0001)。このことより到達ステージの目標設定には、年齢を十分に考慮する必要性が示唆された。
【まとめ】今回、心筋梗塞・心不全ステージ表に準じ、心疾患患者に対する理学療法を行った。運動負荷試験の結果より得られた適切な負荷量を基準にすることで、運動療法を安全に施行することができた。

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© 2004 日本理学療法士協会
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