理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 540
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内部障害系理学療法
心臓外科手術後の理学療法室適応患者の臨床的特徴について
心臓外科手術後の理学療法士の必要性
*山田 宏美高橋 哲也熊丸 めぐみ畦地 萌横澤 尊代安達 仁櫻井 繁樹金子 達夫大島 茂谷口 興一
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抄録

【背景と目的】平成14年4月の診療報酬の改正により,新たに開腹術・開胸術後患者にまで早期リハビリテーション加算の対象が広げられ,理学療法士が心臓外科手術後患者を担当することが増えてきている.当院では心疾患リハビリテーションの施設基準を取得しており,手術後順調に回復した症例に対しては,手術後約1週間で心肺運動負荷試験を行い,心臓リハビリ室にて自転車エルゴメータを用いた有酸素運動を行っている.その一方で,自転車エルゴメータを用いた運動療法が適応にならずに,理学療法室でのADL向上を目的とした理学療法を行う症例も一定の割合で存在する.心疾患リハビリテーションの施設基準を取得していない施設では,心臓外科手術後に理学療法の依頼がある症例は後者の方が多いと考えられ,それらの症例の臨床的特徴を明らかにすることは,心臓外科手術後に理学療法を行う施設を増やすための基礎データを提供するものと考えられる.そこで,本研究では,心臓リハビリ室にて自転車エルゴメータを用いて有酸素運動を行った症例(Bike群)と通常の理学療法の対象となった症例(PT群)を比較し,各群の臨床的特徴を比較検討した.
【対象】対象は平成15年3月から10月までに当院で心臓外科手術を行った連続131例.男性83例,女性48例,平均年齢は65.1(27-86)歳.冠動脈バイパス術後患者67例,弁置換・形成術後患者47例,人工血管置換術後患者10例,心房・心室中隔縫合術後患者・その他7例である.
【方法】Bike群とPT群に分け,年齢,身長,体重,体外循環時間,大動脈遮断時間,手術中出血量,麻酔時間,抜管までの時間,手術前左室駆出率,歩行自立までの期間などを後方視的に調査し,2群間で比較した.統計学的手法は,対応のないt検定とχ2検定を用いて解析し,危険率5%を有意水準とした.
【結果】全対象131例中PT群は34例(26.0%),男性14例,女性20例,平均年齢70.0歳(34-86).Bike群は97例(74.0%),男性69例,女性28例,平均年齢63.4(27-83)歳であった.PT群はBike群比べて年齢が高く,人工血管置換術後患者が多く,体外循環時間が有意に長い傾向にあった.歩行自立までの期間は両群間で差を認めなかった.PT群とBike群の手術様式別体外循環時間などの手術状況を比較したが有意な差は認められなかった.
【まとめ】心臓外科手術後,PT群は全対象中26%存在し,心臓外科手術後のリハビリテーションでは,運動療法を中心とした心臓リハビリテーション以外にもADL向上を目的とした理学療法に対して理学療法士の必要性が示された.

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© 2004 日本理学療法士協会
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