理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 628
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内部障害系理学療法
自覚的エネルギー消費量を用いた糖尿病運動療法指導効果の検討
*文沢 靖百瀬 三千代舩瀬 芳子大平 雅美
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抄録

【はじめに】近年、糖尿病(DM)教育入院も短期間の教育指導が多くなっている傾向にある。当院もクリニカルパスを導入した1週間DM教育入院と3泊4日DM教育入院を施行しているが、今回我々は短期間でも患者に効率よくDM運動療法を理解してもらう目的で、自転車エルゴメーター(エアロバイク800、コンビ(株)製)を用いて、当院では自覚的エネルギー消費量と称しDM運動療法を実施指導し若干の知見を得たのでここに報告する。
【自覚的エネルギー消費量について】この指導方法は、まず患者に食品交換表を用いて1単位(80kcalゆで卵、食パン半分など)提示し、その1単位分を食したと想像してもらいます。当院では比較的食べ応えがある、ゆで卵を食したと想像してもらっています。その後、上記の自転車エルゴメーターを用いて運動してもらい、運動負荷は比較的軽度な30Wで設定し、エルゴメーターに表示される運動消費エネルギーと運動時間を患者に見えないようにして自転車運動してもらう。施行中は常に1単位分(ゆで卵1個分80kcal)を想像してもらい1単位80kcalを運動で消費したと自覚したところで申告してもらうシステムである。休憩の後、実際に消費した運動エネルギー量を患者に示します。
【対象】H14年5月からH15年10月までに1週間DM教育入院と3泊4日DM教育入院を施行した126名(1型DM13名・2型DM113名、男性82名・女性44名、平均年齢58.9±10.5歳、平均HbA1C 10.0±2.1%)。現在も継続中である。
【結果】患者が1単位分(ゆで卵1個分80kcal)をエルゴメーター運動で消費したと自覚した時間とエネルギー量は、平均時間10.5分・平均消費エネルギー量19.8±11.0kcalで自覚し、男女差では男性は10.5分・19.6±9.9kcal、女性は10.4分・18.7±12.8kcalで1単位分(ゆで卵1個分80kcal)を自覚した。
【考察】この方法で得た患者が自覚するエネルギーは、1単位分(ゆで卵1個分80kcal)の約1/4の約20kcalで男女差でも大きな相違は認めなかった。このことは患者にエネルギー消費を考えながら運動するということを教育でき、年齢男女差を問わず、患者は運動で消費するエネルギーの難渋性を理解しやすく、そして食事によって摂取するエネルギーの安易性を教育できると考えられた。また同時にDM治療において、DM運動療法とともに治療の根本とも言われるDM食事療法の重要性も患者に教育できる指導方法と考えられた。しかしその一方で患者固有の生活習慣や個性の違いから、運動で消費するエネルギー消費の難渋性が強く印象に残り、運動に対するコンプレックスを感じる恐れも十分に考えられる。指導後は日常生活活動においてもエネルギー消費している点と、日常でもこまめに体を動かし、自転車エルゴメーターはあくまでも下肢のみの筋力運動であるため、患者の生活環境を考慮した上、全身運動として時間をかけた散歩運動など、患者に生活習慣に合わせた運動方法を指導しケアする必要性が不可欠であると考えられた。

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© 2004 日本理学療法士協会
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