理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 629
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内部障害系理学療法
喫煙者の有酸素性運動能力に関与する因子の検討
*木村 美子長尾 洋子賀好 宏明大峯 三郎舌間 秀雄吉本 奈美和田 太蜂須賀 研二井手 睦
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抄録

【目的】はじめに:喫煙者における有酸素性運動能力の低下に関しては、これまでに報告がある。今回の研究の目的は、長期喫煙者における最大下運動時の、換気および中枢(心拍出量)・末梢循環(酸素動態)反応について調べることにある。
【方法】対象は、10年以上の喫煙歴を有する男性6名で、年齢50.3±4.0歳(平均±標準偏差)、身長169.0±5.1cm、体重65.7±6.3kg、BMI23.0±2.2であった。ブリンクマン指数は平均446.5±122.6であり、全員が1日10本以上喫煙していた。身体特性に有意差がない10名の非喫煙男性(年齢48.7±4.4、身長167.9±7.2、体重69.9±6.9、BMI24.8±2.6)をコントロール群とした。両群とも定期的な運動を行っておらず、Habitual physical activity indexは、喫煙群で29.0±3.5、非喫煙群で28.2±7.1であり、1日の身体活動性に著明な差はなかった。運動負荷テストには1分間10wずつの漸増負荷法を採用し、予測最高心拍数の80%に到達した時点で運動を中止した。呼気ガスの測定にはWestron Mass Spectrometerを用い、breath-by-breath法で分析した。また、近赤外線分光装置を用いて、右外側広筋の酸素化ヘモグロビン濃度(oxy-Hb)の変化を調べた。医師が右の前腕静脈から安静および運動時、20w毎に採血をし、血中乳酸濃度を測定した。心拍数は回復時間終了時まで、連続して記録した。さらに、上肢・下肢血圧比(ABI)を求め、0.9以下を下肢の血流障害と診断した。統計分析には、t検定を用い危険率5%以下を有意とした。この研究は、大学倫理委員会にて承認され、被検者には十分な説明と同意を得て行われた。
【結果】目標心拍数は、喫煙群で136.0±3.3bpm、非喫煙群で137.1±3.6bpmであった。到達運動強度は前者で100.0±28.3w、後者で111.0±20.2wであり、2群間で有意差はなかった。血中乳酸濃度2mmol/Lにおける運動強度は、喫煙群で3.8±0.2Mets、非喫煙群で4.5±0.8Metsであり、喫煙群において低い運動強度で乳酸が蓄積し易い傾向があった(p<0.05)。分時換気量は安静時から運動終了時まで一貫して喫煙群で多く、呼吸数も同様の結果であったが、10w、70wおよび80wで有意差が得られた(p<0.05)。酸素当量(換気量/酸素摂取量)は、10wから70wまで喫煙群で著明に高かった(p<0.05)。酸素脈は、運動中常時非喫煙群で大きかったが、有意差はなかった。右側のABI値は喫煙群が1.0±0.1、非喫煙群が1.2±0.1であり、有意であった(p<0.05)。喫煙群では運動の漸増と共にoxy-Hbが減少する傾向が、6名中5名に認められた。しかし、非喫煙群では10名中8名で増加し続ける傾向がみられた。
【考察】今回末梢・中枢循環に加えて喫煙者の有酸素性運動を障害する因子として、換気能力の低下が確認された。Oxy-HbやABI値の測定結果から、喫煙者に対しては運動継続時間やインターバルも含めて、下肢の酸素不足に対する十分な配慮が必要であると思われた。

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© 2004 日本理学療法士協会
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