理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 161
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生活環境支援系理学療法
脳卒中患者に対する車椅子シーティングの効果の検討
当院車椅子クリニックの実績から
*丸山 陽一古田 大樹栗木 淳子滝沢 弥恵田中 宏美石井 美奈廣瀬 洋子中田 賢芳馬場 孝浩岡村 孝治
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抄録
【目的】近年シーティングへの関心が高まり、小児から高齢者まで幅広い分野で活用されている。当院でもモジュラー車椅子や座位保持装置を備品導入し、車椅子クリニックという形式で最適な車椅子環境を提供できるよう試みている。一方でシーティングの効果についてはまだ十分なEvidenceが確立されていない。これは、その目的が多岐にわたり、効果判定も身体・精神機能、介助者の負担や環境との適合等々、総合的に判断する必要があり、客観的に捉えにくい要素が多いからではないかと考える。そこで入院中の回復期脳卒中患者に限定し、車椅子シーティングの効果(治療的意義)はどのような状況で見いだせるのか、当院の車椅子クリニックの実績から検討を試みた。
【方法】2001年9月から2003年11月までの当院車椅子クリニックの記録から発症後270日以内の脳卒中患者(回復期病棟入院限界)を選び、「シーティングの目的」「主観的判断での効果」「効果の内訳」を調査した。「目的」は11の項目に分類、複数のPTがクリニック時に検討し優先される3項目を選んだ。項目は1)座位耐久性の向上、2)疼痛の軽減、3)褥瘡予防・治療、4)食事(経口)時の姿勢安定・介助量軽減、5)経管栄養時の座位保持、6)精神機能の賦活もしくは安定、7)駆動自立・効率化、8)移乗自立・介助量軽減、9)移動手段の確保、10)良肢位での体幹・上肢機能の活性化、11)その他、である。「主観的効果判定」は「効果あり」「どちらとも言えない」「効果なし」の3択とし、患者の担当PTが行った。「効果あり」の場合は、その「内訳」を目的11項目中効果の大きいと思われる上位2つを選び、それぞれ1位=2点、2位=1点と点数化、この集計を目的件数で除して比較した。
【結果】該当件数はのべ112件・82名、平均年齢は73±9歳、発症からの期間は平均114±62日であった。主観的な効果としては「効果あり」88件、「どちらともいえない」18件、「効果無し」6件であった。効果と目的との比率(効果点数/目的件数)は1)1.13(72点/64件)、2)0.93(28/30)、3)0.42(5/10)、4)0.89(17/19)、5)0.70(7/10)、6)0.84(21/25)、7)1.19(43/36)、8)0.38(9/24)、9)0.44(16/36)、10)0.80(33/41)、11)1.00(9/9)であった。
【考察】効果を感じた上位の項目は駆動、座位耐久性、疼痛に関するものでPTが直接関与する項目であり、効果の確認もPT的な観点で行いやすいと考える。次の食事、精神機能への影響という項目は、シーティングがもたらす二次的な効果を実感できていると考えられ、この部分のEvidenceを確立することが脳卒中におけるシーティングの治療的意義につながると思われる。今後これらの評価法等、継続検討したい。
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© 2004 日本理学療法士協会
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