理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 272
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生活環境支援系理学療法
デイサービスセンター利用者の嚥下機能関連要因
*伊藤 亜希子池川 公章川田 洋子杉本 智穂奥村 悦之
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抄録

【目的】
 デイサービスセンター利用者の嚥下機能を調査し,日常の生活状況が嚥下機能とどのようにかかわっているかを明らかにすることで,嚥下機能を保つためにデイサービスにおいての取り組みを考える目的で本研究を行った。
【対象と方法】
 対象は,某デイサービスセンター2施設のうち,痴呆を認めず,コミュニケーション良好な利用者71名(男性20名,女性51名)。平均年齢83.1±9.1歳であった。
 方法は,利用者を主に介護している職員により,当該利用者の老人保健福祉計画における移動能力の指標と1) 自分で食事ができるか,2) 食事をする場所,3) 食事形態,4) 汁物の摂取,5) よく笑うか,などの生活食事状況15項目。嚥下機能の判定に反復唾液嚥下テスト(以下,RSST)を調査し,嚥下機能と移動能力および生活食事状況との関連を分析した。また,嚥下機能と関連を認める項目においてはオッズ比を算出した。
【結果】
 移動能力と嚥下機能との関係は,「介助により外出し,日中ベットから離れて生活する」と「外出の頻度が少なく,寝たきり生活をしている」を分割点にした場合,移動能力の高い利用者はオッズ比4.55でRSSTが30秒間に3回以上できる者の割合が有意に大きかった。
 生活食事状況と嚥下機能の関係は,「自分で食事ができる」利用者は,オッズ比14.25でRSSTが30秒間に3回以上できる者の割合が有意に大きかった。「食事をする場所」ではベットやふとん以外の場所で食事をする利用者は,オッズ比6.87でRSSTが30秒間に3回以上できる者の割合が有意に大きかった。「食事形態」では普通食を食べている利用者はオッズ比18.66でRSSTが30秒間に3回以上できる者の割合が有意に大きかった。「汁物の摂取」については食べる利用者はオッズ比6.87でRSSTが30秒間に3回以上できる者の割合が有意に大きかった。「よく笑う」利用者はオッズ比4.55でRSSTが30秒間に3回以上できる者の割合が有意に大きかった。
【考察】
 本結果より,デイサービス利用者はレクレーション時の身体的活動範囲を多くし,エレベーター使用を減らし,階段を利用するなどの移動形態の変化。小グループを利用しての声出し読書や口腔機能向上の為の訓練を取り入れたゲーム,良好なコミュニケーションにより笑う機会を増やすなどのアプローチを試みていく必要がある。
【まとめ】
 デイサービスセンター利用者の嚥下機能関連要因を検討した結果,嚥下状態が良好であることと,日中ベットから離れて生活すること,食堂において自分で普通食を食べ,笑うことができる状態間には関連が示唆された。

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© 2004 日本理学療法士協会
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