理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 273
会議情報

生活環境支援系理学療法
介護保険による訪問リハビリテーションサービスにおけるニードと満足度に関する調査
*加藤 徹菅原 里美平林 大輔北村 美樹中嶋 奈津子佐藤 滋
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】介護保険下のリハビリテーションサービス(リハサービス)ではサービス担当者間の情報交換の手段としてサービス担当者会議が行われている。しかし、利用者とサービス担当者が時間経過の中で共通の目的意識を持った上でリハサービスを提供しているか明らかでない。そこで訪問リハビリテーション(訪問リハ)・訪問看護7を受けている利用者、それに携わるケアマネージャー(ケアマネ)およびリハ担当者の三者に訪問リハへの満足度とそれに関わる要因を調査し、共通の目的意識を持った上で連携の取れたサービス提供が行われるための方向性を検討した。
【対象】盛岡市・滝沢村近郊にある、協力の得られた病院・施設の訪問リハ・訪問看護7を受けている利用者31名(男性14名・女性17名)、担当のケアマネ23名、リハ担当者18名を対象とした。
【方法】三者に利用者自身に関するアンケート調査を行なった。回収率は100%であった。調査項目は年齢、性別、介護度、介護者数、家族数、訪問リハ開始時および現在における問題点・改善点(痛み・痺れ、座位・立位保持、起居動作、独歩、外出、誤嚥、スプーン・箸の使用、整容、更衣、トイレの使用、入浴、その他)、生活全般の満足度およびその理由、訪問リハへの要望とした。統計手法はSpearman順位相関、一元配置分散分析を用い、有意水準は5%未満とした。
【結果】調査対象の利用者は73.5±10.8歳、介護度は要支援1名、要介護1は8名、要介護2は10名、要介護3は11名、無記入1名であった。対象の三者が利用者の問題点・改善点を挙げた場合、三者の一致度に有意差は認めなかった。生活の満足度は介護度と間に正の相関(rs=0.48、p<0.05)を認めた。不満の理由として病前にできていたことができないが6例、介助を必要とするが2例であった。開始時の問題点および改善点では一致度の有意差はなく、現在の問題点では利用者とリハ担当者の一致度が69.1±16.7%、リハ担当者とケアマネの一致度が83.5±10.1%と有意に高い値を示した。
【考察】利用者自身の介護度の低下は生活の満足度を低下させる要因であった。介護度の低い利用者は機能障害の改善や基本動作・日常生活能力の改善に対する希望が大きいために現状の生活について満足度を低く認識していることが考えられる。現在の問題点の認識に関してはリハ担当者とケアマネの間で一致度が有意に高く、利用者とサービス担当者の認識の差がある傾向を認めた。このことから利用者とサービス担当者の間の連携を損なう要因に時間の経過が挙げられる。利用者のQOLを高めるには介護度の改善が重要であるが、その際生活の満足度の低下に十分に注意を払うこと、リハサービスを進める上で共通の目的意識を持つポイントは再評価を行った時点での情報伝達であることが示唆された。

著者関連情報
© 2004 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top