理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 274
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生活環境支援系理学療法
体験による在宅生活者の不安の変化
公共交通機関利用訓練を通して
*相澤 さくら田中 康之
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抄録

【はじめに】
 当市では,平成15年度にA型機能訓練事業の参加者の日常生活拡大を目的に,公共交通機関利用訓練を実施した.そこで電車利用に関わる参加者の不安を調査したところ,実地訓練前後で変化が認められたので若干の考察を加え報告する.
【方法】
事業概要:まず,保健センターで「電車とホームの溝またぎ」「人ごみでの時間内乗降」に関して模擬訓練を2回行った.この際の溝の幅,ドア開口時間,車両寸法は利用路線の平均値を用い,当センター職員が通行人役となった.実地訓練は1回約2時間のコースを2回実施し,2回目には県内有数の乗降客数を有する駅の使用や喫茶店の利用も含めた.
調査方法:電車利用訓練に参加した12名を対象として実地訓練前後に「電車利用に関する不安」について調査票を用い聞き取り調査した.更に従事した保健師の意見を聴取した.
対象内訳:男性4名,女性8名,年齢55歳から79歳,日常生活自立度はJランク11名,Aランク1名.発症後の電車利用は有7名,無4名.
【結果】
 実地前は10名が不安を訴えた.その内容は,走行中の車内移動,時間内乗降,人ごみ,階段,立位乗車,ホームと電車の溝,洋式トイレがない,体力等,12項目延べ49件であった.実地後は12名が不安を訴えた.実地前には無かった,乗り換えホームの場所,人が少ない乗車位置の選択,精算機使用方法が加わり,ホームと電車の溝,洋式トイレがない,体力の項目が無くなり12項目延べ47件となった.また時間内乗降,立位乗車等は人数が減り,切符購入,走行中の車内移動等の人数は増えた.保健師からは「人ごみの流れに上手く乗れない」「券売機や運賃表の見方に困惑」「状況判断が難しい」等の意見があった.
【考察】
 実地前に上がった参加者の不安内容は車両利用時や外出全般で考えられることに偏っていたが,実地後は切符購入や乗り換え方法,模擬訓練とは異なる人の流れ等,電車利用に付随する諸状況に直面したことによる新たな問題が認識されるようになっていた.これは,関わった保健師の意見からも同様なことが考えられた.つまり,未体験や体験不足が車両利用以外の必要な条件への認識を低くさせると考えられた.このような認識の偏りは電車利用に限らず,他の日常生活場面でも起こりうると考えられ,在宅生活に戻った方々にとっては様々な実地体験を積む事が日常生活拡大には重要であり,それをフォローアップ出来る行政の体制作りの必要性を感じた.

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© 2004 日本理学療法士協会
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