理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 725
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生活環境支援系理学療法
転倒予防教室におけるスクリーニングテストの有用性とその探索的分析
*小貫 睦巳
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抄録

【目的】超高齢社会を迎え地域において転倒予防教室を行う機会は年々増加しており、その際転倒リスク者のスクリーニングが重要になってくる。今回、茨城県藤代町の健康増進事業にて転倒予防教室を行う機会を得た。その際実施した転倒アセスメント表を基に転倒リスク者のスクリーニングの有用性と健常高齢者、身障高齢者との関連について探索的分析を行った。
【対象・方法】2002年10-12月に行った6回の健常高齢者対象の転倒予防教室の参加者100名と2003年3月に行った身障高齢者対象の同教室の参加者33名の合計133名を対象とした(男性50名、女性83名、平均年齢73.7±6.37歳)。教室の際に調査した鈴木の転倒アセスメント表を基に、次の1-4の手順に沿って統計学的解析を行った。1)転倒リスク15項目のうちリスク数5以上の「リスク高群」と4以下の「リスク低群」に分け、男女別、年代別、健常・身障別、15項目別に分割表による独立性の検定を行う。2)1で得られた結果のうち有意差のあったものに対して、ロジスティック回帰分析による単変量解析を行い調整しないオッズ比を計算する。3)同様にフルモデルでの調整したオッズ比を計算する。4)上記結果より変数選択し、モデルの検証を行う。尚、統計解析にはDr.SPSSを用い、有意水準は5%未満とした。
【結果】1)で「リスク高群」と「リスク低群」間には健常・身障別のみ有意差がみられた(χ2=19.454 p=.00001)。また15項目それぞれに対し独立性検定を行った所、Q11、12以外の13項目全てに有意差がみられた(うち10項目は1%未満)。これにより健常・身障別を目的変数とし、リスク数、15項目それぞれを説明変数としてロジスティック回帰分析を行った。リスク数のオッズ比は2)では1.755(p=.00004、95%CI:1.384-2.227)、3)では1.929(p=.00003、95%CI:1.462-2.546)だった。15項目については2)はQ1、Q4-9、Q15、3)はQ4-7、4)の変数選択は変数増加法ではQ4、Q6-8、変数減少法ではQ3-8、Q15に有意な結果が得られた。以上よりモデルを検証し、Q4-7の4項目を転倒リスクの高い因子と結論した。
【考察】今回、非常に高い確率で結果が得られたことより、鈴木の転倒アセスメント表の有用性が示唆された。また、身障高齢者は健常高齢者に対し、15項目のうち「バランス能力」「筋力」「入院の既往」「立ちくらみ」が転倒に関連性の高い項目という結果が出た事は大変興味深い。ただ、この質問項目には一部曖昧な記述も含まれており(横断歩道、履き物)これらの解釈が交絡となりバイアスとなる可能性もある。今後これらの影響を含め、より良いスクリーニングテストとなるよう文面の改編や解釈の統一等が必要と考えられる。

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© 2004 日本理学療法士協会
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