抄録
【目的】当院は2002年4月に開院し、現在回復期リハビリテーション病棟(以下回復期病棟)を2病棟計76床有しており在宅復帰率は6~7割である。当初より院内ADLの向上と早期退院を目指しチームアプローチを行ってきた。2003年4月のセラピスト増員を機会に、自宅内ADLの向上と定着にも目を向け、ミニカンファレンス内容を充実させ情報交換の増幅を図った。さらに家屋調査・家族指導を積極的に取り入れ、在宅生活へのアプローチに着目したリハを施行したが早期退院という結果には至らなかった。この原因として家屋調査時期の遅延があげられ、その理由を考察したのでここに報告する。
【対象・方法】家屋調査を実施後2002年12月~2003年3月に自宅退院した患者10名をA群、2003年4月~7月に自宅退院した患者18名をB群とした。A群では、早期自宅退院を目指し、1.チームアプローチの実践2.定期カンファレンスの実施3.家屋写真等の情報を基にしたADL訓練を行った。B群では以上の内容に加え、1.セラピスト増員2.入院時カンファレンスの実施3.ミニカンファレンスの充実4.家屋調査後のより具体的な環境設定下での訓練の実施5.家族のリハビリテーションへの参加を促す、等を追加した。患者背景、入院日数、家屋調査時期、調査から退院までの日数を調査し、A群とB群で比較検討した。
【結果】両群の患者背景に統計的有意差(カイ2乗検定、t検定)は認められなかった(A群年齢71.9±8.9歳、男:女=5:5、脳血管障害8名、大腿骨骨折2名、入院時FIM81.3±29.5点、退院時FIM100.5±22.3点、B群年齢70.1±10.4歳、男:女=13:5、脳血管障害15名、大腿骨骨折3名、入院時FIM80.8±21.4点、退院時FIM103.4±13.5点)。
平均入院日数はA群123.8±32.7日、B群140.2±37.5日(t検定; p=0.26)、家屋調査時期は入院日よりA群69.6±19.8日、B群94.4±28.3日(t検定; p=0.02)、調査から退院までの日数はA群54.0±33.7日、B群45.6±25.5日(t検定; p=0.46)であった。
【考察】セラピスト増員による時間的余裕を質の向上につなげようと努力したが、今回の調査結果により家屋調査時期が遅延していたことがわかった。ミニカンファレンスの充実や家族のリハへの積極的な参加の呼びかけ等を実施したことによりリハ内容は充実したが、それらに費やす時間・日数が増幅し、ある程度のゴールが達成されてから家屋調査を実施していた。それに加え、スタッフの早期退院に対する意識の薄れや、家屋調査に至るまでの流れに対する認識不足、確かな患者ゴールの早期決定が不十分であったことなどが調査時期の遅延につながったと考えられる。今後、家屋調査を実施する時期を検討し、質を保ちながら入院期間を短縮することに努力したい。また、患者や患者家族の満足度、退院後の家庭内でのADL能力維持ができているかを追跡調査して、更なる質の高い治療サービスの提供につなげていきたい。