理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 743
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生活環境支援系理学療法
長期療養患者の自宅退院に関係するADLについて
*岩下 佳弘村上 陽子井手上 抄子伊藤 潤城戸 達也山中 紘
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キーワード: 長期療養, 自宅退院, ADL
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抄録

【はじめに】長期療養型病院へ転入院してきた脳卒中患者を早期自宅退院へと継げるための着目すべきADL項目は何かを検討することを目的として,ADLの分析を行った.さらに,今後のADLアプローチの方向性も交えて考察したのでここに報告する.
【対象】H13年1月1日からH15年8月31日の期間に当院に入院した急性期治療を必要としない脳卒中患者114例(平均年齢80.2歳,M/F=45/69)を対象とした.ただし,自宅以外への退院患者,主病名の重複例,ショートステイによる入院例,季節による再入院例は除いた.
【方法】対象患者を6ヶ月以上の入院継続群と6ヶ月以内の自宅退院群に分類した.入院時および退院時のADL各項目と6ヶ月以内の退院との関連を多変量解析により検討した.ただし,入院継続群の退院時ADLは,入院日から6ヶ月以上経過した時点のADLとした.ADL評価にはBarthel Index(以下BI)を用い,1.全10項目での検討,2.Self-care Index(食事,着替え,整容,入浴,トイレ,排尿コントロール,排便コントロール)の合計とMobility Index(移乗,トイレ,入浴,歩行,階段)の合計で検討,3.入院時と自宅退院時,または6ヶ月以上の入院継続時点でのBIの改善点数差で検討を行った.なお多変量解析には,転帰(入院継続群か自宅退院群)を従属変数,BIの各項目を独立変数とし,多重ロジスティックモデルを用いた.
【結果】1.院時および退院時BI(全10項目)の多変量解析の結果, いずれの項目においても自宅退院との有意な関連は認められなかった. 2.入院時Self-care Index合計とMobility Index合計の多変量解析の結果,Self-care Index合計に自宅退院との有意な関連を認めた(P<0.05).退院時については有意な関連は認められなかった.3.改善点数差の多変量解析の結果,Mobility Index合計に6ヶ月以内の自宅退院との有意な関連を認めた(P<0.05).
【考察】今回の結果からMobilityの改善がよい患者ほど自宅退院が可能となっていることから, Mobilityの問題が十分に解決できなかったことが転入院の原因になっていると考えられた.また,現在のADLアプローチではSelf-careの改善は困難であることが示唆された.今回の検討結果を踏まえて,Self-careの自立度が高い患者に対しては,入院早期からMobilityの改善に向けたプログラムを施行することで,自宅退院を積極的に促していくことが可能と思われた.
【まとめ】1.入院時からSelf-careの自立度が高い患者では,早期に自宅退院へ継げられる可能性が示された.2.Mobilityの改善が早期の自宅退院を促進できる可能性が示された.

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© 2004 日本理学療法士協会
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