理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 744
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生活環境支援系理学療法
転帰に影響を及ぼす因子の検討
回復期リハビリテーション病棟において
*山田 優子新美 佳子戸田 恵美子鈴木 重行
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抄録
【はじめに】
 回復期リハビリテーション病棟(以下回復期リハ病棟)は「寝たきりの予防」と「家庭復帰」を目的としてリハビリテーションを集中的に行うための病棟である。当院回復期リハ病棟の自宅復帰率は全国平均と比較して高い数値を得ているが、自宅復帰に至らなかった患者の原因追究は十分ではなく、自宅復帰に導くための的確なアプローチの手掛りを掴むためにも現状を把握し、転帰に影響を及ぼす因子の検討が必要と思われた。今回、Functional Independence Measure(以下FIM)を用い移乗移動動作に焦点を当てた疾患別調査を行ったので報告する。
【対象と方法】
 対象は平成14年9月から平成15年6月に当院回復期リハ病棟に入院していた患者のうち、廃用症候群を除いた142名(中枢性疾患69名:男性40名、女性29名、平均年齢71.9歳、整形外科疾患73名:男性15名、女性58名、平均年齢77.9歳)とした。年齢、性別、疾患名、発症から入院までの期間、在院日数、移乗移動動作に関するFIM5項目、同居家族の有無、転帰先を調査したうえで中枢性疾患、整形外科疾患別に転帰先を自宅と転院(施設入所も含む)の2群に分けて比較を行った。年齢、発症から入院までの期間、在院日数はt検定、それ以外の項目はχ二乗検定を行い、危険率5%未満を有意な差とした。
【結果】
 移乗移動動作に関するFIM5項目では中枢性疾患は階段以外の4項目、整形外科疾患は階段、浴槽移乗の2項目に有意差を認めた。同居家族の有無においては両疾患ともに有意差を認め、その他の項目で有意差を認めたものは整形外科疾患における発症から入院までの期間、在院日数であった。
【考察】
 疾患特異性による相違が今回の調査結果にも反映されたが両疾患ともに移乗移動動作の重要性が明確になり、中枢性疾患ではベッド・椅子・車椅子移乗、トイレ移乗等といった基本動作の獲得、整形外科疾患ではさらに難易度の高い応用動作の獲得が自宅復帰に影響を及ぼすことが示唆された。従って、自宅復帰に向けてより早期から将来を見越した具体的な目標設定とそのアプローチを展開するとともに家族構成や介護力の把握、環境整備や介護サービス等の情報を提供していくことが必要であると思われた。
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© 2004 日本理学療法士協会
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