理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 760
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生活環境支援系理学療法
体力づくり事業による高齢者の運動機能の変化
*分木 ひとみ河島 克彦脇 美早子
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キーワード: 高齢者, 運動機能, 健康増進
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抄録
【目的】
 近年市町村では介護予防の目的で、高齢者の転倒による骨折や閉じこもりなどの予防に対する種々の取り組みが行われている。これらは予防だけでなく、健康維持や増進の観点からも重要であり、高齢期の高い生活の質を維持していく上でも必要なことである。湖東町では介護予防も含めて自分らしく元気で生きがいのある生活を送れることを目的に、地域在住の高齢者に対し体力づくりを中心とした事業を実施し、中でも運動プログラムは運動機能の程度により2群に分け指導した。本研究では、プログラムを9カ月間実施した前後での運動機能の変化について報告する。
【方法】
 対象は事業に参加した70名のうち、開始時と終了時に運動機能測定が実施できた高齢女性40名で、平均年齢は74.8±6.4歳であった。測定項目は身長、体重、BMI、握力、長座位体前屈、座位での両足開閉、垂直跳び、ファンクショナルリーチ(FR)開眼片足立ち、足踏みテストである。足踏みテストとは大腿を水平まで挙上した足踏みを、10秒間にできるだけ速く実施しその回数を値とした。
 運動プログラムは垂直跳び、FR、座位両足開閉および足踏みテストに着目し、独自の判定基準によりすこやか体操群とぴんぴん体操群に分け指導した。すこやか体操は大腿四頭筋と大殿筋を、ぴんぴん体操は腸腰筋と中殿筋を対象とし、椅子を使用して行う筋力強化の体操である。これらの他に両群とも、柔軟体操とウォーキングを指導した。また9カ月の実施期間中は動機づけや啓蒙の目的で媒体の利用や、自宅近隣の集会場に参集し体操指導やレクリエーション活動などを7回実施した。
 結果は2つの体操群で事業前後の各測定項目の比較には対応のあるt検定を、両群の比較には対応のないt検定を用いて統計処理を行い、危険率5%未満をもって有意とした。
【結果】
 すこやか体操群は27名(75.1±6.5歳)、ぴんぴん体操群は13名(74.2±6.6歳)で、両群間の年齢、体重、身長およびBMIに有意差は認められなかった。すこやか体操群はFRが22.3±8.6cmから26.2±8.3cmと(p<0.001)、足踏みテストが19.2±3.1回から20.2±4.9回に(p<0.05)、ぴんぴん体操群では座位両足開閉が25.9±4.2回から29.8±4.4回と(p<0.001)改善が認められた。両群間比較では開始時に、唯一座位両足開閉がぴんぴん体操群で有意に低かったが(p<0.05)、終了時には有意差は認められなかった。
【考察】
 今回は2群に分け運動機能に対応したプログラムを実施したことで、群間に存在した機能レベルの差が解消され、また両群とも改善が認められた。このことは高齢者に対する体力づくりが効果的であるだけでなく、評価に応じたプログラム実施の有効性が示唆された。地域での健康増進など多数の対象者に対する取り組みでは、全て個別に対応することは困難であるが、ある程度の機能レベルに応じたプログラムの提供は必要であると考える。
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© 2004 日本理学療法士協会
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