理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 961
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生活環境支援系理学療法
リフト導入前後の指導内容に関する一考察
*藤井 智山崎 哲司清水 美紀
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抄録
【目的】在宅サービスでは、生活の改善を図るために、福祉用具の導入や住宅改造といった環境整備を実施することが多い。その中で、福祉用具は、導入前のシミュレーションとともに、導入後の使用確認が重要である。今回、リフトの操作について、導入前後における指導状況について調査したので報告する。
【対象】平成14年9月から15年8月までの1年間に、リフト設置に関する相談を実施し、9月末までに導入後の操作確認まで終了したものは22例で、設置したリフトは24件であった。このリフト24件に対し、操作指導を行った主な人24例(本人1例、介護者23例、平均年齢49.9歳)を対象とした。
【調査方法】リフトの設置場所、リフトや吊り具の種別、操作者状況、指導内容・回数などを確認するための調査票を作成し、担当セラピストが記載した。指導内容を、吊り具装着として「仙骨部までの差込み」「脚部交差やロック等の確認」「ハンガーフックへの懸吊」「しわ・ねじれの修正」、リフトでの移動操作として「昇降操作」「移動・方向転換」「着座操作」、吊り具の抜き取りとして「ハンガーフックからの懸吊解除」「接触を避けるハンガー等の移動」「抜き取り」、管理として「充電操作」「停電時の吊り下げ操作」の項目に分け、導入前、導入直後、フォロー時(導入後2から4週間後)に指導・確認し、操作手順に間違いがなくなるまで指導を実施した。
【結果】リフトの設置場所は、浴室12件、ベッド周囲11件、居室1件であった。リフトの種別は、固定旋回型13件、据置型天井走行式5件、固定型天井走行式4件、床走行型2件で、吊り具の種別は、脚分離型のものが19件、椅子式が3件、ベルト式が2件であった。リフト操作者24人のうち、8人は操作経験があった。指導内容のうち何らかの項目で2回以上繰り返して指導・確認が必要であった人の割合を、リフトの操作経験の有無に分けてみると、未経験群では、導入前56.3%、導入直後50%、フォロー時25%で、経験群では、導入前・導入直後25%、フォロー時0%であった。また、未経験群は各項目において指導が必要であり、経験群では、指導項目のうち「接触を避けるハンガー等の移動」「充電操作」などが主な指導項目であった。
【考察】今回の調査では、リフトの導入前だけでなく、導入直後やフォロー時の指導・確認も必要であった。これは、リフトが車いすや電動ベッドと比べ、操作方法が周知されている福祉用具とはいえず、導入にやや時間が掛かると、操作方法を忘れてしまうためだと考える。また、導入前に行う展示場や床走行型でのシミュレーションでは十分とはいえず、導入後、実際場面で操作を指導することが重要だといえる。リフト経験者においても導入前後で実地の確認・指導が必要であった。これは「機種の違いによる操作性」や「異なる環境や障害像による違い」などによるものと考えられる。
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© 2004 日本理学療法士協会
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