抄録
【はじめに】当施設の福祉機器展示室では、PTが相談業務にあたっている。相談内容は多岐に渡るが、その中でリフトの導入に至った事例が5例あり、今回はフォローの一環で使用状況について調査し、導入にあたっての傾向や問題点、課題等について分析・考察したので報告する。
【対象と方法】H14年3月からH15年6月までにリフトを導入した5例(男4名女1名)について、本人・介護者及び介護支援専門員等に、訪問しての聞き取り調査を行った。
【結果】対象者の平均年齢は73.2才、介護4が1名、介護5が4名、疾患は脳血管障害2名、頸髄障害による四肢麻痺2名、パーキンソン病1名だった。主な介護者は、妻4名嫁1名で全員女性、主にリフトを操作する人だった。全員健康状態に何らかの不安がある。使用期間は平均11ヶ月、導入のきっかけは、1例は入院中に看護師に移乗に失敗された経験を持ち退院と共に導入し、他は関係者(PTや訪問Ns、介護支援専門員等)からの勧めで導入した。PTの関わり方としては、体験援助、機種と吊り具の選択、使用方法の指導、導入の援助だった。全員ベッドと車いすの移乗に使用しており、ポータブルトイレ等への移乗実施者は1例のみで、他の場所での使用はなかった。1日の使用頻度は、2から6往復だった。主な介護者が抱えて移乗を行うのは2例で、それ以外の人が抱えて行うのは、ヘルパーやNs、従な介護者、訪問PT、訪問入浴業者だった。吊り具はトイレ用を使う者が3例で、選択は全てPTが行った。他の用具との併用では全員、電動ベッド、車いす、エアマットを使用している。定期外出として通所介護に通っている人が3名だった。使用感は、本人は楽で安心との答えが多く、介護者は身体が楽になったと答えている。もっと早く導入すれば良かったとの声も聞かれた。本人がしっかりしている場合は、介護者に自ら使い方の指導をしている例も見られた。
介護支援専門員等からは、本人や家族の受入れやヘルパーが使用しない事が問題点としてあげられた。リフトの効果としては、起きている時間が長くなり外出に繋がった、家族が楽になったと評価している。
【考察】今回の事例は、主な介護者全員がよくリフトを使いこなしていた。外出が確保されリフト導入が本人のQOL向上に役立っている。また、周囲が必要だと感じてから導入まで時間がかかっているが、事前に情報があったことで介護者が必要となった時に即対応できた。本来重度障害者には退院時等に将来を見越した用具の体験をさせ情報を与えるシステムが必要と考える。また全員PTの支援を評価しているが、障害像を理解し他の方法を含めて検討でき指導できるPTがリフトの支援をすることは重要と考える。
【問題点と課題】(1)介護者は腰痛等の疾患を持つ。(2)周囲が必要と感じてから導入までに時間を要す。(3)タイミングを逃さないためにも事前情報が必要。(4)ヘルパー等への啓発も重要。(5)支援するPT側も常に研鑽が必要。