理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 611
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物理療法
脳幹部梗塞により、顔面神経麻痺を呈した症例に対する超音波治療の効果
マッサージとの比較
*成澤 一枝小林 準境 哲生赤星 和人永田 雅章
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抄録

【はじめに】今回、完全な顔面神経麻痺を呈した症例に対し、マッサージと超音波治療をそれぞれ約1ヶ月間施行し、比較検討したので報告する。
【症例】49歳、男性。脳幹部・右小脳梗塞。右片麻痺、左上下肢運動失調、右顔面神経麻痺、嚥下障害、開口障害。糖尿病。2002年2月22日、右頸部痛出現し近医入院。2月25日、右片麻痺出現。2月26日、脳血管造影により右椎骨動脈の解離性動脈瘤からの塞栓と診断され、同動脈閉塞術施行。同時に閉塞性水頭症に対する脳室ドレナージ施行。4月25日当院入院。MRI画像では橋・延髄・右小脳半球に梗塞巣を認めた。
【入院時所見】右片麻痺;SIASmotor(2 1B 2 3 3)、Br.stage上肢2手指3下肢4。左上下肢運動失調あり。右顔面神経麻痺;柳原法4/40点、眼瞼下垂、兎眼、口角下制、口唇閉鎖不全、浮腫、たるみ。感覚;右上下肢感覚異常、右顔面重度鈍麻、左顔面・右上下肢温冷覚鈍麻。筋緊張;右頸背部・腹筋群低緊張、左頸背部過緊張。起居動作・座位立位保持とも手摺り使用にて軽介助、振戦強く左上下肢・頸背部で過剰に努力。頸部は常時左回旋側屈伸展位で短縮・筋硬結あり、左顔面筋も過緊張・筋硬結あり。嚥下障害、開口不全あり経管栄養。目標:顔面の非対称性の軽減とリラックスし安定した端座位保持の獲得。
【経過・方法】4月30日から顔面・頸部にマッサージ実施。週2から3回右側は浮腫・たるみに対しリンパマッサージを、左側は筋硬結に対し行い、頸部のストレッチ・可動域訓練も合わせて行う。実施後表情筋トレーニング施行。5月29日、座位時頸部正中位保持可能となる。顔面筋硬結軽減し対称性向上するも、筋収縮は認められず。6月17日超音波治療開始。OG技研超音波治療器ソニックマスターES-2使用。右顔面頸部に対し週2から3回、1回20分間、1MHz 0.5W/cm2 照射時間率20%の非温熱効果設定で施行。左側に対しても同様の設定にて週1回実施。実施後表情筋トレーニング施行。
【結果・考察】マッサージだけでも1ヶ月後、顔面の非対称性軽減し、頸部正中位保持可能となるが浮腫・たるみは残存。超音波治療では、1回目より明らかに浮腫・たるみの軽減が認められた。1ヶ月後、筋収縮は認められず完全麻痺のままではあるものの、非対称性は目立たなくなった。超音波治療における非温熱効果には蛋白合成や膠原線維の合成の促進、血管壁・細胞膜の透過性亢進があり、それにより組織再生や浮腫の軽減が促される。今回の症例においても、1回目より浮腫・たるみの軽減に効果が認められ、1ヶ月後では、浮腫・たるみ及び非対称性の軽減の他、皮膚の弾力性の向上が認められた。マッサージに比べ、超音波治療は浮腫・たるみの軽減に対し有効であり、かつ即効性があったと考えられる。

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© 2004 日本理学療法士協会
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