理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1050
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アテトーゼ型脳性麻痺の上肢機能の向上を目的とした肩関節内転装具の使用について
*廣瀬 勇徳弘 孝子石黒 英子中岡 民江大野 淑嶋田 進山川 晴吾高橋 義仁宮本 耕造
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キーワード: 脳性麻痺, 上肢, 装具
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抄録

【目的】
 脳性麻痺、特にアテトーゼ型児の上肢の使用場面で、上肢リトラクション方向の不随意運動の出現が、阻害因子になることがしばしばある。この方向の運動をコントロールし、且つ上肢の前方での使用を容易にすることにより、上肢機能を向上させることを目的に、肩関節内転装具を考案作製した。そして、この装具を数名のケースに適用し、若干の知見を得たので、その経験を報告する。
【対象】
 対象の性別は、男1名、女3名である。年齢は9歳~17歳、平均12.5歳である。すべてアテトーゼ型脳性麻痺である。粗大運動能力はGMFCS level 5である。これらの対象は、PTおよびOTの場面で、電動車椅子操作、またはその練習、1スイッチ操作のゲーム等を実施していた。
【方法】
 上肢リトラクション方向の不随意運動のコントロールと上肢の前方での使用を容易にすることにより、上肢機能を向上させることを目的とした肩関節内転装具は、リーバンド社の肩装具等を参考に考案作製した。装具は、上腕ベルト、腰ベルトと、体側で上腕と腰部を繋ぐ、前後の2つのバンドからなる。前方バンドは3本のゴム入布製で、各ゴム入布は、異なった長さに設定して、肩関節外転伸展方向の不随意運動の調節力と、上肢を前方へ出すための張力およびその作用する範囲を調整できるようにした。また後方バンドは、2本のゴム入布製で、肩関節外転屈曲運動を調整できるようにした。
 この肩関節内転装具を、対象の、利き手または、不随意運動の強い側の上肢に装着し、電動車椅子操作、1スイッチ操作のゲーム等を実施し、これを写真とビデオで記録および評価した。
【結果】
 本装具は、対象により効果に違いはあるが、電動車椅子操作、1スイッチ操作時等の上肢機能を向上させた。また装具装着により、片側上肢使用中の、反体側上肢の上体支持力を向上させ、座位姿勢を安定化させた。
 また一定期間、装具を使用した対象のなかに、装具使用の継続中、比較的短期間に、装具非装着時の上肢操作性が向上した例があった。
【考察】
 この装具による効果は、不随意運動の出現の状態と、対象の上肢等の随意運動の状態に関係するとみられる。そして今回の対象のような、一定の上肢コントロール力をもつケースにおいて、電動車椅子操作等の、比較的粗大な上肢機能で、肩関節内転装具は、効果があった。また装具使用中に、(装具非装着の)上肢機能の向上を示したケースがあったことから、PT治療のなかに取り入れることも有効と考えられる。

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© 2004 日本理学療法士協会
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