理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1049
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固有関節覚測定装置の開発
*植田 一幸小林 梨沙田中 浩介浦辺 幸夫木村 浩彰中井 道雄安達 伸生出家 正隆越智 光夫
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抄録
【目的】]近年固有関節覚の研究は、膝前十字靱帯損傷患者や肩前方不安定患者を中心に研究がおこなわれ、関節障害の予防の観点からも注目されている。今回我々は固有関節覚を簡便に短時間で評価できる測定装置を開発し、健常膝関節における固有関節覚の再現性について調査したので報告する。
【方法】固有関節覚測定装置(センサー応用 社製)はSkinner (1984)らの方法を参考に開発した。テスト回数、開始角度、運動方向、目標角度、移動角速度、休止時間等は各項目それぞれ測定目的に応じて設定できる。移動アームは任意の位置で0度設定のキャリブレーションが可能で、膝関節と肩関節の測定が可能である。アームの移動角速度は最小0.1度の検出力を持たせた。
 今回我々は開発した固有関節覚測定装置を使用して、膝関節の関節位置覚と関節運動覚を左右3回測定し、測定値のばらつきを調査した。対象は健常ボランティア24名、平均年齢21.8歳であった。関節位置覚は膝関節屈曲5度、15度、25度を目標角度とし、10度/秒の角速度で下肢を移動させ5秒保持した後に目標角度を他動的に再現する方法で測定した。関節運動覚は膝関節屈曲15度と45度から0.5度/秒の角速度で伸展および屈曲方向に動かし、認識した角度を記録した。統計学的分析は3回測定した関節位置覚および関節運動覚それぞれの測定値のばらつきを反復測定分散分析を用いて検定した。有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】関節位置覚の再現角度の平均値は目標角度5度に対して右3.2度、左3.4度、目標角度15度に対して右14.8度、左16.3度、目標角度25度に対して右25.9度、左27.3度であった。関節運動覚の認識角度の平均値は膝関節屈曲15度からの伸展が右14.2度、左14.3度、膝関節屈曲15度からの屈曲が右15.9度、左15.8度、膝関節屈曲45度からの伸展が右43.9度、左43.9度、膝関節屈曲45度からの屈曲が右45.5度、左45.6度であった。統計学的には3回測定した関節位置覚および関節運動覚の測定値に有意差はなく再現性が確認された。
【考察】固有関節覚の評価は一般的に、関節位置覚と関節運動覚が測定されるが、専用の固有関節覚測定装置がないため臨床では種々のテスト方法が実施され、その測定手技は未だ確立されていない。今回我々は固有関節覚を簡便に短時間で評価できる測定装置を開発し、健常膝関節における固有関節覚の再現性を確認することができた。今後は固有関節覚が外傷後や術後にどう変化していくのか、固有関節覚に対するトレーニングは効果があるのかについて更に調査していきたい。
【まとめ】固有関節覚を簡便に短時間で評価できる測定装置を開発し、健常膝関節の固有関節覚の再現性を確認した。
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© 2004 日本理学療法士協会
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