理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 76
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理学療法基礎系
体幹回旋運動に伴う肩甲骨の運動について
―第二報―
*勝木 秀治田中 龍太今屋 健園部 俊晴
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抄録

【はじめに】我々は、第31回日本肩関節学会で同時開催された肩の運動機能研究会において、体幹肢位と肩甲骨の運動との関係を調べ、骨盤後傾位の姿勢では、体幹回旋動作に伴う肩甲骨の運動が制限されることを示し、投球動作など上肢動作を伴う体幹運動では、適度な骨盤前傾位を保つことが重要であると報告した。しかし、被験者によっては骨盤前傾位で肩甲骨の運動が少ない場合もあり、その関係には不明な部分も多かった。そこで今回は、さらに検討を加えて、体幹回旋角度と肩甲骨の運動量との関係について検討した。
【対象及び方法】対象は肩関節や体幹に既往のない健常成人男性8名・16肩(年齢26.9±5.0歳)。測定姿勢は端坐位とし、体幹肢位を変化させるため斜面台を用いて骨盤の傾斜を変化させ、自然肢位、骨盤前傾位、骨盤後傾位の3肢位にて各計測を行った。計測項目は、(1)体幹回旋角度、(2)第3胸椎棘突起から肩峰後角までの距離(肩峰距離)とし、(1)については頭頂より撮影した画像を用いて、(2)については、メジャーにて各肢位での安静時、体幹の前方回旋時の値をそれぞれ計測した。尚、計測は前方回旋側の肩甲骨とし、全対象両側計測した。また、前方回旋時と安静時における肩峰距離の差を求め、これを肩峰移動距離とし、肩甲骨の外方移動の指標とした。統計処理には、ピアソンの相関係数を用いて、各肢位における体幹回旋角度と肩峰移動距離との関係を検討した。
【結果】各肢位での体幹回旋角度は、自然肢位で39.1±7.2度、骨盤前傾位で41.5±6.0度、骨盤後傾位で40.3±8.7度であり、統計上有意差はなかったが骨盤前傾位で大きい傾向にあった。また、肩峰移動距離は、自然肢位で0.97±0.55cm、骨盤前傾位で0.96±0.54cm、骨盤後傾位で0.51±0.50 cmであった。体幹回旋角度と肩峰移動距離との関係では、自然肢位、骨盤後傾位では共に相関関係を示さなかったが、骨盤前傾位では、体幹回旋角度と肩峰移動距離は正の相関を示した{r=0.54(n=16),p<0.05}。つまり、骨盤前傾位では体幹回旋角度が増加すると肩甲骨の外方移動量が大きくなった。
【考察】臨床において、上肢のリーチ運動後に体幹回旋角度が増加し、体幹の運動がスムースに行えるようになる場面を経験するが、今回の結果は、臨床で経験するこのような現象を裏付ける結果となった。体幹の回旋角度は骨盤前傾位で大きい傾向にあるが、症例によっては、体幹の回旋動作に対してアプローチする場合、単に骨盤を前傾位に誘導するだけでは体幹の回旋角度を増加させるには不十分であるといえる。つまり、本研究結果を踏まえると、骨盤前傾位で肩甲帯の運動を引き出すことが、体幹の回旋運動を引き出すポイントの一つといえる。体幹運動と肩甲骨の運動に関する本研究の臨床的意義は大きく、今後も研究を継続していきたい。

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© 2005 日本理学療法士協会
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