理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 77
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理学療法基礎系
把持筋力計を用いた検者間の比較について
―経験者と学生との比較:肩関節外旋・内旋筋力測定時―
*井上 和久原 和彦丸岡 弘鈴木 智裕細田 昌孝久保田 章仁田口 孝行西原 賢磯崎 弘司藤縄 理高柳 清美溝呂木 忠江原 晧吉細田 多穂
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キーワード: 把持筋力計, 経験者, 学生
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抄録

【目的】把持筋力計(hand-held dynamometer、以下HD)の筋力評価について、これまでその信頼性および固定方法の違いについて検討を行い、検者の固定方法の違い(肘関節伸展位法:以下EE法、肘関節30°屈曲位法:以下EF法)が筋トルク値に大きく影響する可能性があるということを報告した。そこで今回、HD使用経験のある理学療法士とHD経験の少ない学生の筋力測定結果からその測定値の信頼性に与える影響について検討したので報告する。
【方法】対象は、若年健常女性10名(平均年齢22±0.5歳)で、骨・関節系の既往歴がない被験者であった。検者は経験年数9年の理学療法士1名を検者Aとし、また学生2名(4年生)をそれぞれ検者B・Cとしてランダムに測定を行った。測定機器は、HD(アニマ社製μTas MT-1)を使用し、左右の肩関節外旋筋力および肩関節内旋筋力を徒手筋力検査法に準じ腹臥位で測定した。測定は、メイクテスト法を使用して、各筋力の5秒間等尺性最大筋力を左右それぞれ3回測定し、また検者の固定方法の違い(EE法・EF法の2種類)において各3回測定を行った。但し、3回の測定の平均を筋トルク値とした。解析データは、測定誤差({最大値-最小値=誤差}÷平均値×100)および筋トルク値とした。統計処理は、SPSS Ver.12.0を使用し、分散分析・t検定を行い、有意水準は危険率5%未満とした。なお、本研究はヘルシンキ宣言に則り被験者に同意を得た上で実施した。
【結果】測定誤差(%)の比較は、肩関節外旋のEE・EF法ともに検者間に何ら有意な差は認められなかったが、肩関節内旋のEE法において検者A<検者B、検者A<検者Cの検者間に有意差が認められ、EF法においては検者A<検者B、検者C<検者Bの検者間に有意差が認められた。筋トルク値(N)の比較は、肩関節外旋のEE・EF法ともに検者A>検者B・Cの検者間に有意差が認められ、肩関節内旋のEE・EF法ともに検者A>検者B・C、検者C>検者Bの検者間に有意差が認められた。
【考察】本研究結果からHD使用経験者である検者Aは、学生検者B・Cより有意に被験者のもつ筋トルク値を測定していたことが示唆され、また、HD使用経験の少ない学生検者の場合では、被験者のもつ筋トルク値を過少評価する傾向があると思われる。さらに学生検者が実施する肩関節内旋筋力測定には、学生検者間に有意な差が認められ、学生間の固定方法の熟練度や技能の違いが影響していると考えられた。肩関節内旋筋力測定時の測定誤差については、学生検者より有意に検者Aの測定誤差が低く信頼性の高い測定であることが示唆された。以上の結果より、これまで把持筋力計の測定についての報告同様、一定以上の経験年数や技能を有する検者において、その信頼性は比較的高いことが再認識された。

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© 2005 日本理学療法士協会
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