理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 416
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理学療法基礎系
スリングエクササイズにおいて視覚‐運動機能が及ぼす影響について
*大塚 智文宮下 智村上 貴秦
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抄録

【目的】
 我々は、スポーツ選手のコンディショニング作りにスリングエクササイズ(以下、SET)を導入し、ローカルマッスル(以下、LM)及びグローバルマッスル(以下、GM)に対してのトレーニングを行っている。スポーツ選手は特に、視覚情報に対し即座に運動が対応できることが重要な要素となる。我々の先行研究では、通常トレーニングにLMトレーニングを加えることにより、視覚入力に対する体幹運動の正確性が増したことを報告した。これは、LMにより体幹の安定性が保障されたことで動作の正確性が増したと考えることができる。本研究は、LMトレーニングに加え、GMの高いレベルの課題を与えた場合、体幹運動の正確性が、全身運動反応に、どのような効果をもたらすのかについて明らかにするものである。
【対象】
 関東大学アイスホッケーリーグ1部に所属する部員、男子28名 平均年齢19.5±1.0。
【方法】
1.SET課題は、1)立位にてスリングロープを両足にかけ、(空中で不安定になる)両手を放して姿勢を安定させる。2)身体を左にねじる。3)正面に戻す。4)身体を右にねじる。5)正面に戻す。以上の事を、上肢を使わないままで試行可能(成功者)か否か(失敗者)判定した。
2.MRシステム(Index社製MR Low Back Extension IP-M4000)による体幹伸展運動の筋協調テストを行い、求心性および遠心性収縮で、視覚入力に対する運動出力の誤差を測定した。
3.視覚運動反応時間はSenoh社製全身反応測定装置LC9700を使用し測定した。
 統計処理は、SET課題成功群と失敗群に分類し、t-検定を用い、危険率5%で検討した。
【結果】
 課題成功者は9名で、運動出力の誤差平均は求心性収縮が8.47±2.1cm、遠心性収縮が7.83±1.5cm、平均反応時間は0.32±0.14秒であった。失敗者は19名、求心性収縮が7.21±1.5cm、遠心性収縮が6.86±0.6cm、平均反応時間は0.34±0.29秒であった。両群は反応時間において有意差が見られた(p<0.05)。
【考察】
本課題では、非常に不安定な状態での感覚‐運動系による姿勢制御を行いながら運動を行うことが要求される。まず課題遂行によりフィードバック制御による運動学習が起き、学習がさらに進むことでフィードフォワード制御が発達し、課題を成功させることが出来ると説明できる。課題成功者の視覚運動反応時間が速いことから、動的な姿勢・運動制御を行える者は視覚情報に対応した筋の素早い反応が可能であることが示唆された。また有意差は無いが、課題成功者の運動出力誤差は少なくなる傾向から、LMトレーニングにより体幹の安定性を得た者が、効果的にGMを強化することで、様々な環境に適した姿勢・運動制御の効率が向上することが示唆された。

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© 2005 日本理学療法士協会
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