理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 415
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理学療法基礎系
投球動作における体幹と頚部の関係について
*中川 哲朗中島 あつこ田川 維之石元 泰子竹田 俊也有木 隆太郎冨岡 貞治小林 裕和福山 支伸
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抄録

【はじめに】投球動作はスピードが0であるボールに対して,1秒にも満たない時間で100km/hを超える速度を持たせる動作であり,投手はそれに必要なエネルギーを全身を利用して発生させている.そのメカニズムは,重心移動や下肢筋力にて発生させたエネルギーを体幹回旋や肩関節内旋にて増幅させ,上肢を経て,最後にボールへと伝達させていくと言われており,全身の運動連鎖が重要であるとされている.今回我々はこの投球動作の中で重要な役割を担う体幹の運動に着目し,その体幹の上方に位置する頭部の位置が投球動作における体幹機能に何らかの影響を及ぼすのではないかと考え,体幹に対する頚部の傾きが投球動作に及ぼす影響について研究を行った.
【対象及び方法】対象は某高校硬式野球部に所属している高校生9名(右投手6名,左投手3名,全例オーバースロー)とした.被験者には3回の投球を行わせ,そのフォームを2台のビデオカメラ(60Hz)を用いて撮影した.球種はストレートのみとし,最も理想的なフォームに近かったと思われる投球を投手本人に選ばせ,解析を行った.撮影した映像は三次元動作解析システム(America PEAK社製)にて解析し,投球初速度(km/h),コッキング期及び加速期における頚部傾斜角度平均値(deg)及び体幹回旋速度最大値(deg/sec)を算出し,危険率5%における相関関係の有無を調べた.
 頚部傾斜角度は両側大転子中点と両側肩峰中点とを結ぶ線分と両側肩峰中点と頭頂とを結ぶ線分がなす角とした.体幹回旋速度は両側大転子を結ぶ線分と両側肩峰を結ぶ線分が水平面上でなす角の角速度のとした.
【結果】投球初速度,頚部傾斜角度,体幹回旋速度それぞれの平均値は112.3±6.6km/h,24.9±11.9deg,589.8±172.0deg/secであった.頚部傾斜角度と体幹回旋速度との間では負の相関(r=-0.701)を認めたが,頚部傾斜角度と投球初速度との間には相関関係を認めなかった(r=-0.420).
【考察】今回の研究では,体幹に対する頚部の傾斜が小さいと体幹の回旋速度が上昇するという結果となった.これは,体幹の回旋運動の軸となる脊柱に対して,頚部が傾斜することより頭部の位置のずれが生じ,軸回旋の効率が低下したのではないかと考えられる.しかしながら,頚部傾斜角度と投球初速度との間には相関関係がみられず,頚部傾斜角度が投球初速度に与える影響について証明するには至らなかった.
 今後は,他の要素についても考慮しながら,より詳細な解析を行っていきたいと考える.
 本学会において,更に考察を加え詳細について報告する.

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© 2005 日本理学療法士協会
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