理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 419
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理学療法基礎系
身体知覚支援および運動制御のための器具の開発
*重田 暁阿部 均
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キーワード: 動作分析, 知覚, 運動制御
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抄録

【はじめに】近年、整形外科疾患、中枢神経疾患を問わず、運動学習を含む様々な運動制御に関する理論が理学療法に応用され、行為と知覚の循環プロセスや環境との相互作用をふまえた治療が重要視されている。実際の臨床場面では、機能障害や機能的制限のみならず姿勢・動作分析の評価や治療における様々な環境(場面、場所)での運動課題に則した的確なフィードバックが必要とされる。
 しかし、従来の観察による動作分析は、我々の経験に左右されやすく、客観性に欠ける。また、三次元動作解析装置などの機器は高価で、場所の制約を受ける。あるいはフィードバックに関しても、口頭指示やハンドリング、鏡、ビデオなどを用いる方法はそれぞれ時間・空間的なずれが生じやすいなどの問題を有している。
 今回、我々は臨床で簡便に使用可能かつ、動作分析、評価の精度を向上させること。また、患者自身が能動的に運動することを通じて、自己の姿勢や身体の動きと環境との関係に対する気づきを得て、より多様性をもった活動が遂行できるようにすることを目的として、コルセット型の器具を開発し、若干の知見を得たので報告する。
【構造】腰仙椎型の硬性コルセットを、左右の骨盤部と軟性ポリエチレンによる殿部含む仙骨部の3つに分けて、ベルクロとベルトにより連結しており、脊柱や各下肢の動きを反映しやすいように工夫した。また、両側骨盤部の上前腸骨棘(ASIS)近傍に、身体の前方に向かって伸縮する棒(基準棒)を取り付けた。この棒は矢状面、前額面、水平面の各方向に対して調整可能な構造となっている。
【使用方法】基本的な使用方法は、頭部・体幹を鉛直位にした座位または立位において下腹部に本器具を装着し、2本の基準棒を矢状面、前額面、水平面の各方向に対して、棒の伸長する長さ、地面に対する向きが垂直や平行となるように調整し、その後に立ち上がりや歩行など任意の動作を遂行する。
【考察】これまでの臨床での使用経験より、患者自身は基準棒を介した能動的な活動から、身体と環境との関係を知覚していると思われる。その方法は、個々によって異なっており、例えば視覚を利用する場合でも、単に基準棒と一方向の壁のなす角度との比較だけではなく、床面の格子状のタイルの線や前方にある机の水平線との関係を利用していたりする。また、基準棒と壁との接触の有無のような場合では、身体の延長としてのdynamic touchと呼ばれる種類の触覚や固有受容感覚を利用して、身体と環境との関係や情報を探索している。動作分析や評価する際に、観察者である我々は、こうして得られた情報を患者とともに共有し、フィードバックやフィードフォワードに用いることでより治療の効果が図れると思われる。
【まとめ】今後、患者はどのような情報を知覚し、どのような場合に治療効果があるのか、さらに検討を加えたいと考えている。

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© 2005 日本理学療法士協会
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