理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 434
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理学療法基礎系
少年サッカー選手における運動イメージの調査
―キック動作の分析 第2報―
*金森 宏山本 尚司
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抄録

【目的】動作の獲得に運動イメージは重要な要素であり,特に動作を指導するという場において,言語表出がつくる運動イメージは重要である.我々は先の第39回日本理学療法学術大会において,少年期のサッカーにおけるキック動作から運動イメージの特徴と性質の一考察を報告した.今回,ポイントを絞ることによりキック動作の獲得に向けた指標を得られるのではと考え,下肢のみのデータに対し分析を行った.結果,若干の知見が得られたので前回との関連性もまじえ,ここに報告する.
【方法】対象はサッカーを地域のクラブチームで行っている利き足が右足の小学校2年生11名,3年生13名,4年生15名,5年生13名,6年生7名,中学校1年生5名の計64名で「おもいっきりボールを蹴る」という動作を質問紙により調査した.この質問紙の内容は左右の肩,肘,手,股,膝,足部の12部位を5項目(「力を入れる-入れない」「強く-弱く」「早く-遅く」「まわす-止める」「大きく-小さく」),7段階で評価する.今回は得られた両下肢のデータのみに主成分分析を行い,解析にExcel統計2002 for Windows (R)を用いた.分析の詳細は対象行列を相関行列,必要とされる主成分の個数を5として分析を行い,さらに各個人の主成分得点を出力した.
【結果】主成分分析の結果は,固有値では第6主成分で1.5以上,第8主成分で1.0以上となった.累積寄与率は60%を超えたのは第5主成分まで,80%を超えたのは第10主成分であり,第1主成分(寄与率30.17%),第2主成分(寄与率11.90%),第3主成分(寄与率8.18%),第4主成分(寄与率5.97%),第5主成分(寄与率5.63%)であった.第1主成分では正の項目に左下肢の項目を、負の項目に右下肢を表した.第2主成分では負荷量が正の項目で右下肢を,負の項目で左下肢の項目を多く表した.また第3主成分の正の項目では股・膝の動きの大きさを,負の項目では両側の足首の項目を多く表した.
【考察】結果で得られた主成分負荷量より考察を行った.意味のありそうな主成分は第3主成分までであり,第1主成分は正の方向に左膝・股のダイナミックな動きを負の方向に右膝・股の回転の動きを表していると考えた.第2主成分は正の項目に右膝・股のダイナミックな動きを,負の項目に左足首のダイナミックな動き表していると考えた.また第3主成分は正の項目に両側の股・膝の関節の回転の動きを,負の項目に両側足部のダイナミックな動きを表していると考えた.これより「おもいっきりボールを蹴る」という動作イメージは,第1主成分で表されたイメージが関係して,第2主成分で表されたようなイメージをもつ傾向があると考えられる.これは各個人によって様々な運動イメージをもつ右下肢のキック動作が,左下肢の運動イメージよりも多様化する為と考えられる.今後,成人との比較による調査や統計的手法の改善,およびスポーツの経験による差や特長の違いなどを調査して行きたい.

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© 2005 日本理学療法士協会
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