理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 433
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理学療法基礎系
握力調節課題における両手間転移
*甲斐 悟渡利 一生森田 正治宮崎 至恵中原 雅美森下 志子松崎 秀隆吉本 龍司村上 茂雄高橋 精一郎
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キーワード: 転移, 運動学習, 握力調節
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抄録

【目的】我々の一連の研究では,筋出力調節運動における運動学習で条件を変えることによりその効果を立証し,利き手での学習効果と非利き手への転移との関連をみた。今回の研究の目的は,両手間転移が利き手の筋出力調節の運動学習に連動するのか,また,保持能力は転移するのかを知ることである。
【方法】対象は健常者56名(平均年齢22.9±5.1歳,男性30名)で,利き手は左手が6名であった。利き手で握力調節の運動学習を行い,運動学習前,運動学習5分後,1日後,1週後に各5回の握力調節能を左右共にアナログ式の握力計にて測定した。握力調節能の測定と運動学習の課題は同一であり,各対象者の握力の最大値を測定し,その値の20%値を目標値とした。運動学習は30回行った。対象者は結果の知識(Knowledge of Results ;以下KR)付与の頻度別に任意に7群に分けた。0回KR付与群は運動学習の30回中1度もKRを付与しなかった。1回KR付与群は運動学習30回中1回のみKRを付与した。このように,2回KR付与群,3回KR付与群,4回KR付与群,5回KR付与群,そして毎回KR付与群に分けた。KRは直前の握力をkgで口頭にて伝えた。利き手と非利き手の握力調節能の相関をみるために,時期毎にSpearmanの相関係数を求めた。各群の握力調節能を利き手と非利き手各々で運動学習前と運動学習後の各時期との比較をするために,一元配置分散分析と多重比較を行った。統計学的分析は,有意水準を5%未満とした。
【結果】利き手と非利き手の握力調節能の相関はKR付与の頻度に関係なく,運動学習前はr=0.476-0.881,5分後はr=0.546-0.976,1日後はr=0.515-0.952,1週後はr=0.611-0.952であり,高い相関が認められた。握力調節能の運動学習前と運動学習後の各時期との比較は,5回KR付与群では,全ての時期に利き手,非利き手で統計学的に有意差が認められた。毎回KR付与群では,運動学習前と5分後の利き手と非利き手,運動学習前と1日後の利き手,そして運動学習前と1週後の利き手と非利き手に統計学的に有意差が認められた。
【考察】握力調節能に関しては,運動学習前においても利き手と非利き手の相関が高く,転移しやすい課題であることが伺える。利き手での運動学習後に利き手の握力調節能が向上し,統計学的に有意差を認めるのは,5回KR付与群と毎回KR付与群であり,運動学習の保持が出来ていることを示している。非利き手の握力調節能は,同様の2群で運動学習の保持を示す結果となっている。非利き手は運動学習をしていないため,KR付与の頻度を変えた今回の研究結果から,利き手から非利き手への握力調節能は転移され,運動学習の効果が及んだ利き手の握力調節能に連動して非利き手の握力調節能が向上することが分かった。

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© 2005 日本理学療法士協会
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