理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 444
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理学療法基礎系
測定肢位および設定角度の違いが膝関節位置覚の再現能力に与える影響
*長嶺 朗丸山 仁司
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抄録

【はじめに】関節固有覚障害で正確に位置覚を評価する必要がある。測定条件が違うことで検査の生理学的意義に違いがある可能性がある。本研究の目的は、測定開始肢位及び設定角度の違いが、膝関節位置覚の再現能力の誤差にどのように影響するかを検討することであった。
【対象と方法】対象は、膝関節に外傷や疾病の既往がない健常成人男性のボランティア10名(平均年齢26.4±5.2歳)の20膝関節であった。方法は、腹臥位、背臥位及び立位で、膝関節の設定角度を15°、45°及び75°とし再現角度の誤差を検討することである。腹臥位及び背臥位の測定を、治療台を用いて行った。立位の測定は、足部が床面に接地しないようにしエアロバイクを用い実施した。デジタルカメラを治療台から2mの距離で、被検者の膝関節と同じ高さでカメラの向きが膝関節に対し垂直になるように設置した。被測定肢を測定開始肢位から設定角度まで他動的に屈曲した。設定角度を5秒間保持することで再現の目標関節角度を被検者に体験させた。膝関節角度を測定開始肢位まで戻し、10秒間の安静保持の後、検者が測定肢を設定角度まで再現させた。被検者が設定角度を再現したと認識した関節角度を記録した。被検者を閉眼させて行った。膝関節運動の角速度が毎秒5度以下であった。紙面上で分度器を用いて測定した。腹臥位45°で5組の検者間で5回測定することで各検者間の測定結果の再現性を確認した。再現角度の測定値が3回の実測値の平均値であった。統計学的検定に分散分析を用いた。多重比較にBonferroni 検定を用いて検討した。有意水準が5%以下であった。
【結果】それぞれ腹臥位、背臥位及び立位で測定した。設定角度が15°、45°及び75°の場合の定数誤差が、それぞれ腹臥位が3.2±3.5、-1.3±4.1及び-4.1±6.2であった。背臥位が2.5±4.3、2.5±3.5及び5.8±5.8でありそして立位が2.4±3.0、-0.1±2.2及び1.0±4.1であった。検者間の再現性で著しい差がなかった。
【考察】立位では、測定開始肢位が軽度屈曲位となっている。一方、臥位では膝関節が完全伸展位である。井原らは関節位置覚が、半月板、関節包、前・後十字及び内・外側副靭帯に存在する関節内メカノレセプター、筋紡錘及び皮膚知覚受容器からの求心性の入力情報が常に関与しているという。したがって臥位による測定は測定前からの求心性の刺激でover及びunder shootが出たと考えられた。しかし、同じ臥位でも腹臥位では設定角度が増すに従いunder shootの傾向が、背臥位では設定角度が増すに従いover shootの傾向とそれぞれ相反する傾向があった。その理由として、測定開始肢位が違う場合、測定中の下腿にかかる重力の方向性の違いがあり位置覚情報の錯乱があったため相反したものと考えられた。

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© 2005 日本理学療法士協会
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