理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 445
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理学療法基礎系
運動肢注視,運動関連言語想起の運動イメージ構築に及ぼす影響
―TMSによるMEPを指標として―
*門馬 博菅原 憲一田辺 茂雄福村 憲司鶴見 隆正岡島 康友
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抄録

【はじめに】運動イメージを用いた練習がパフォーマンスを向上させることは数多く報告されている.しかし運動イメージを効率的に構築する方法は明らかになっていない.これは,イメージ想起が被検者の意志そのもので外面から捉えることが出来ないことに起因している.そこで今回,経頭蓋磁気刺激装置(TMS)による運動誘発電位(MEP)を用いてイメージ想起を具体的に表象できる時間と異なるイメージ想起課題によって生じる皮質運動野の興奮性の相違を分析し,イメージ想起に関わる時間的および課題特異的効果を検討したので報告する.
【対象と方法】実験1(運動イメージ構築に要する時間を検討):対象は健常成人3名(いずれも右利き),実験肢位は坐位.運動イメージ課題は右手関節掌屈(最大収縮),被験筋は右橈側手根屈筋とした.音刺激による反応時間課題によって運動イメージを想起させ,その0(control),0.5,1,2,3,5秒後の各タイミングで各5試行(順序はランダムに設定),計30試行のMEPを導出し,各条件におけるMEP amplitudeを0秒後での平均値を基準とした% control値で比較した.
実験2(イメージ課題別の検討):対象は健常成人5名(いずれも右利き).実験肢位,被験筋は実験1と同様に行った.イメージ課題は1:control条件として安静時(rest),2:壁面の1点注視時(con-1),3:言語想起時(con-2)のMEPを測定した.次に実際の右手関節掌屈を20回練習として行わせた.その後4:右中指指尖を注視しながらの運動イメージ想起時(task-1),5:注視に加え運動関連言語を想起させてのイメージ時(task-2)の各MEPを測定した. TMSのタイミングは音刺激から2秒後に行った.解析は各条件におけるMEP amplitudeを,restを基準とした% control値で比較した.なお,全被検者には実験の目的及び使用する機器の説明を行い同意を得て行った.
【結果と考察】実験1: 0.5秒後(120.8%),1秒後(113.4%),2秒後(122.1%),3秒後(118.5%)でMEPの促通がみられ,5秒後では107.6%とcontrolに近い値を示した.運動イメージは刺激音に近い時間で構築され,2秒後以降は減衰する傾向にあった.イメージ想起は集中力を要し持続が難しい課題であることが示唆された.
実験2:restと比較するとtask-1(p<0.05),task-2(p<0.01)でMEP amplitudeが有意に増大していた.task-1,task-2間では有意差を認めないが,task-2でよりMEP amplitudeが増大するという傾向がみられたことから,注視に加え運動関連言語想起(silent speech)を行うことは運動イメージ構築に有効な手法であることが示唆された.

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© 2005 日本理学療法士協会
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