理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 450
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理学療法基礎系
快適歩行における重心の滑らかさと酸素摂取量の関係の検討
―躍度最小及びトルク変化最小評価関数を用いて―
*榎 勇人竹林 秀晃野村 卓生岡崎 里南西上 智彦石田 健司谷 俊一
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抄録

【はじめに】我々は第39回本学術大会にて,共に運動の滑らかさを表す躍度最小(以下CJ)及びトルク変化最小(以下Cτ)評価関数を用いて,快適歩行時に重心と下肢関節トルクの滑らかさが正の相関関係にあり,トルク変化が増加した後に重心の滑らかさが破綻することを報告した。CJは躍度(加速度の一微分,以下jerk)が,Cτは関節トルク変化(トルクの一微分,以下TC)が少ないほど,値が小さくなり滑らかな動作であると位置づけられる。今回の目的は,歩行の基礎研究として歩行時の代謝利得と両者との関係を検討することである。
【対象・方法】対象は健常成人男性10名(平均年齢22±1歳,平均体重64.9±7.9kg,平均身長172.0±3.1cm)。測定は2枚の床反力計(アニマ社製MG-1090)と三次元動作解析装置(アニマ社製LOUCUS MA-6250)を使用し,前方腕組にて快適速度で歩行した右下肢立脚相データを分析した。マーカーは両側第5中足骨頭・外果・膝関節裂隙・大転子・肩峰に貼付し,サンプリング周波数240Hzにて3回の歩行を測定した。またトレッドミル上を快適速度にて6分間歩行し,後半3分間の平均酸素摂取量(以下V(dot)O2)を呼吸代謝測定装置(チェスト社製centaura.1)にて求めた。快適速度は,予め10m歩行にて計測した。
【データ処理】重心CJは床反力前後分力(以下Fy)を算出し,制動相と駆動相を時間軸100%として正規化して,CJ=1/2∫(jerk)2dtの式にて求めた。jerkはFyを体重などで正規化したものを微分して求めた。また下肢関節CτはCτ=1/2∫Σ(TC)2dtの式にて求めた。V(dot)O2は後半3分間に定常状態から逸脱した1名を除き,9名で検討した。
【結果】前回同様,重心CJは制動相に比べ駆動相で有意に高値を示し (p<0.01),下肢Cτは有意差を認めなかった。また重心CJと下肢Cτは各相(制動r=0.790 p<0.005 駆動r=0.678 p<0.05)及び立脚相全体(r=0.729 p<0.05)で正の相関関係を示し,下肢TCが踵接地後平均26msecと,足尖離地前平均97msecにピークに達し,その両ピーク後約30msec後に重心jerkがピークとなる波形を示した。さらに今回V(dot)O2は,重心CJと正の相関関係を認めたが(r=0.696 p<0.05),両者は歩行速度とも強い正の相関関係を示していた。
【考察】V(dot)O2と重心CJが正の相関関係を示した事から,快適歩行では滑らかな重心移動を行う者ほど,楽に歩いていることが示唆されたが,両者は速度とも強く相関しているため,今回計測した速度間(52から86m/min)での快適歩行では,速度が遅いほど滑らかに,楽に歩けると言え,今後一定速度での両者の検討が必要と考えられた。

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© 2005 日本理学療法士協会
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