理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 451
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理学療法基礎系
歩行の定常性における加齢の影響について
*具志堅 敏黒後 裕彦鈴木 智裕飛松 好子
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キーワード: 歩行, リヤプノフ指数, 加齢
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抄録

【目的】
リヤプノフ指数は力学系のアトラクタが示す軌道不安定性を定量化することができる。我々は,これを用いて歩行中の体幹の加速度波形から最大リヤプノフ指数を推定することで歩行中の動きの定常性を測定することが出来ることを明らかにしてきた。しかし歩行の定常性における加齢の影響については明らかにされていない。
本研究では,歩行の定常性における加齢の影響を調べることを目的とした。

【方法】
対象は20歳から65歳までの日常生活が自立し,本研究への参加を承諾した健常成人101名(男性48名,女性53名)であった。対象者には自由歩行および最大努力歩行を依頼した。その時の体幹の動きを3軸加速度センサーと記録装置が内蔵された携帯型装置(インテリジェントモニタ,アイ・ティ・リサーチ株式会社)を用いて計測し,その波形からリヤプノフ指数を算出した。対象者には事前に測定の内容を説明し,同意を得た。
自由歩行時のリヤプノフ指数と年齢との関係を,Pearsonの相関係数を用いて検討した。さらに対象者を20歳から10歳ごとに年代に分類し,群間比較を行った。また,自由歩行および最大努力歩行時のリヤプノフ指数の違いについて,対応のあるt検定を用いて検討した。有意水準は5%未満とし,統計解析には統計ソフトSPSS 11.0J for Windowsを用いた。

【結果】
左右方向のリヤプノフ指数と年齢との間には,有意な相関関係は認めなかった。上下方向と前後方向のリヤプノフ指数においても,同様に有意差を認めなかった。また3方向のリヤプノフ指数について年代間で一元配置分散分析を行った結果,年代間に有意な差を認めなかった。しかし平均値を比較すると徐々に大きくなる傾向があった。また中高年者においては,若年者に比べリヤプノフ指数のばらつきが大きくなるという特徴があった。また,最大努力歩行時の左右,上下,前後方向のリヤプノフ指数は自由歩行時よりも有意に大きな値を示した。

【考察】
20歳から65歳までの日常生活が自立し日常的に外出するような活動的な人々においては,歩行の定常性という点において個人差はあるものの年齢の影響を受けにくいことがわかった。とりわけ中高年者においては個人差が大きいことが特徴的であった。

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© 2005 日本理学療法士協会
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