理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 462
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理学療法基礎系
足底温度変化が感覚受容器及び足底認知機能に与える影響について
*角田 信夫田中 和哉大平 功路山村 俊一
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抄録

【はじめに】近年、足底感覚刺激や足底認知機能が立位姿勢に与える影響、体性感覚入力遮断や冷却による感覚受容器の反応低下による姿勢動揺などが数多く報告されており、立位における足底感覚・足底認知機能の重要性が認められている。しかし足底温度変化が感覚受容器や認知機能に変化を及ぼし、その結果姿勢が変化するといった一連の報告は少ないと思われる。つまり生理学的変化と認知機能と姿勢・動作の関係性は明確になっていない。そこで先ず今回は足底温度の差異による足底感覚及び足底認知機能の変化について検討した。
【対象・方法】対象は健常成人13名(男性6名、女性7名)、年齢24.4±2.0歳、13肢(全て左側)である。足底温度操作は1)温度操作を行わない群(control群)、2)足部を15°Cの水に10分間浸す(冷却群)、3)足部を45°Cの水に10分間浸す(温熱群)の3群に分けた。測定項目は足底感覚検査として踵部に対してコンパスを用いて二点識別覚検査を、足底認知機能検査として一辺が2.5cmの3種類の図形(正方形・菱形・平行四辺形)を踵部に当て、その形を答えるという課題を用いた。足底温度はラッパ型照準機付ポケット放射温度計MC15C-8400(株式会社シロ産業)を使用し検査後に測定した。検査は同被験者に対して1群・2群・3群の全てを実施し、その順序は被験者ごとにランダムに行った。分析はWilcoxonの符号順位検定を用いて二点識別閾値(Double Point Threshold以下DPT)、足底認知課題正答数(以下正答数)をcontrol群、冷却群、温熱群で比較し、Spearman順位相関を用いて足底温度とDPT・正答数の関係を調べた。なお有意水準は5%とした。
【結果】検査終了時の足底温度の平均はcontrol群29.1±2.2°C、冷却群19.9±0.9°C、温熱群34±0.5°Cであった(外気温24.5±0.9°C)。DPTについてcontrol群と温熱群との比較で温熱後にDPT減少を認めたものが13名中9名、増加が4名、冷却群との比較では冷却後のDPT減少が13名中6名、増加が5名、変化なしが2名であった。正答数についてcontrol群と温熱群との比較で正答数増加を認めたものが13名中10名、減少が3名、冷却群との比較では冷却後の正答数増加が13名中7名、減少が6名であった。またWilcoxonの符号順位検定、Spearman順位相関共に有意な関係は認められなかった。
【考察】結果より温度変化とDPT、正答数において有意な関係性は認められなかったが、温熱後には感覚受容器の感受性・認知機能の向上が起こる傾向にあった。また温熱後に正答数増加を認めた10名中7名はDPT減少を伴っており、この点から温熱による足底認知機能向上には感覚受容器の感受性向上が作用している可能性が考えられる。今後、認知課題の内容の影響を考慮しながら検討を重ねたい。

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© 2005 日本理学療法士協会
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