理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 471
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理学療法基礎系
超音波の照射率の違いがラット下腿三頭筋の廃用性筋萎縮の進行抑制効果におよぼす影響
*荒木 景子中野 治郎沖田 実岡本 眞須美中塚 祥太山崎 麻耶
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抄録

【目的】
近年の先行研究によれば、各種組織に超音波を照射すると線維芽細胞成長因子(Fibroblast growth factor;FGF)やインシュリン様成長因子などが発現するとされている。そして、これら成長因子は筋線維肥大のメカニズムにも関与することが知られており、これらのことから推すると超音波は廃用性筋萎縮の治療・予防にも応用できるのではないかと思われる。しかし、この点に関する知見は乏しく、具体的な超音波の照射率や方法についてはこれまで明らかにされていない。本研究の目的は、超音波によるラット下腿三頭筋の廃用性筋萎縮の進行抑制効果を照射率の違いから検討することである。
【方法】
予備実験として、Wistar系雄ラット15匹(220±10g)を5匹ずつ持続照射群、間歇照射群、模倣照射群に分け、超音波照射による下腿三頭筋と直腸の温度変化を調べた。具体的には、麻酔したラットの下腿三頭筋に対し1MHz、1Watt/cm2の条件で、持続照射群には100%、間歇照射群には20%の照射率で、回転法にて15分間超音波を照射し、その際の温度変化を経時的に測定した。なお、模倣照射群には超音波は出力せず、導子のみを動かした。次に、本実験としてWistar系雄ラット20匹(220±10g)を5匹ずつ対照群、持続照射群、間歇照射群、模倣照射群に分け、持続・間歇・模倣照射群は両側足関節を最大底屈位で2週間ギプス固定した。そして、5回/週でギプスを除去し、予備実験と同様な方法で超音波照射した。実験期間終了後は左側ヒラメ筋・腓腹筋の凍結横断切片をATPase染色し、筋線維タイプ別に筋線維直径を計測した。また、腓腹筋試料の一部を用いてELISA法によるFGF含有量の定量を行った。
【結果】
予備実験の結果、持続照射群の筋内温は超音波照射を開始して約7分後に40°Cに達し、終了まで一定していた。一方、間歇・模倣照射群の筋内温、ならびに全ての群の直腸温は変化しなかった。次に、間歇・模倣照射群に比べ持続照射群はヒラメ筋のタイプ I・II線維、腓腹筋のタイプ IIA・IIB線維の平均筋線維直径が有意に高値を示し、間歇照射群と模倣照射群にはヒラメ筋・腓腹筋ともすべての筋線維タイプの平均筋線維直径に有意差はなかった。また、持続照射群のFGF含有量は対照群、間歇・模倣照射群より有意に高値を示し、この3群間に有意差はなかった。
【考察】
今回の結果から、100%の照射率で超音波を照射するとラット下腿三頭筋の廃用性筋萎縮の進行は抑制され、この機序にはFGFの発現が関与している可能性が示唆された。しかし、20%の照射率では廃用性筋萎縮の進行抑制効果、ならびにFGFの発現も認められなかった。したがって、廃用性筋萎縮の進行抑制に対する超音波の効果は、今回の条件においては照射率の大きさに依存するのではないかと考えられる。

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© 2005 日本理学療法士協会
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