理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 470
会議情報

理学療法基礎系
糖尿病ラットの糖負荷試験による血糖値の変動
*中島 里奈安村 大拙石田 和人鈴木 重行
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】糖尿病患者の耐糖能を改善する手段のひとつとして運動療法の有効性が認められている。糖尿病モデルラットはストレプトゾトシン(STZ)投与による1型糖尿病が比較的容易に作成できることから多くの研究で使用されている。そこで今回我々は、STZ誘発糖尿病モデルラットを作成し、糖負荷試験による血糖値の変動を指標として、運動療法や物理療法介入の時期について検討したので報告する。
【方法】実験は名古屋大学医学部動物実験委員会の許可を得て行った。実験動物は7週齢のWistar系雄ラット(平均体重 222.5 g)を用いた。糖尿病は腹腔内にSTZを45 mg/kg濃度を1回投与し誘発した(以下、DM群、n=7)。DM群、対照群(以下、CONT群、n=8)ともに実験中、飼料および水を自由に摂取させ(糖負荷試験前日を除く)、体重、摂取量を毎日測定した。糖負荷試験はラットを前夜絶食させた後、麻酔下にて行った。方法は血糖値測定のため負荷前に採血し、ブドウ糖 1 g/kgを頚静脈に設置したカテーテルより急速静注し、糖負荷後120分まで経時的に採血し、グルコースオキシダーゼ法により血糖値を測定した。なお、糖負荷試験はSTZ投与後 4、5日目および14日目(n=4)、7日目(n=3)に施行した。
【結果】2週間後DM群の体重はCONT群に対し有意に低値であり、体重増加の抑制の傾向がみられた。DM群はCONT群に比べ水摂取量はSTZ投与翌日から有意に高値であったが、飼料摂取量に差はみられなかった。空腹時血糖は、STZ投与後 糖負荷試験の施行日に関係なくCONT群より有意に高値であり、さらにDM群の中でも空腹時血糖は7日目、14日目が4、5日目より有意に高値であった。血糖値の変動はSTZ投与後4、5日目に施行した糖負荷試験では個体差が大きかった。これに対してSTZ投与後7日目、14日目のそれはピーク時以後低下が抑制される傾向となり、糖負荷後120分の血糖値はCONT群に比べ高値であった。
【考察】STZ投与後の体重はSTZの濃度に依存して低下するとの報告と、本実験ではSTZ投与前の体重を維持していることから、45 mg/kgのSTZ投与は比較的マイルドな1型糖尿病ラットを誘発させたと考えられる。またSTZ投与後 4、5 日目では血糖値の変化に個体差が大きかったことよりその病態は完成していないと推測される。STZ誘発糖尿病ラットでは、諸家の報告と同様にSTZ投与後7日目、14日目では顕著な高血糖が出現することがわかった。これらより、STZ誘発糖尿病ラットを用いた理学療法の全身耐糖能への効果を検討する場合、その介入時期はSTZ投与1から2週間が適当であると考えられた。

著者関連情報
© 2005 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top