理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 473
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理学療法基礎系
関節拘縮の進行抑制に対する振動刺激の影響
―ラットにおける実験的研究―
*松田 輝沖田 実日比野 至辻井 洋一郎
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抄録

【目的】 従来,理学療法の分野において振動刺激は筋スパズムの軽減や末梢循環の改善などを目的に利用されてきた物理的刺激の一種であり,現在では俗にいうマッサージ機器として一般家庭用としても市販されている.そして,近年の先行研究では関節拘縮に対して振動刺激が有効であるとした報告が散見され,振動刺激の新たな効果が注目されはじめている.ただ,関節拘縮の病態は,筋線維の短縮や関節周囲軟部組織を構成するコラーゲン線維の変化など様々で,どのような病態に対して振動刺激が有効に作用するのかは明らかになっていない.そこで,本研究では関節拘縮の病態に関与することが指摘されている筋内コラーゲン線維の架橋結合に対する振動刺激の影響を検討した.
【方法】 Wistar系雄ラットを実験動物に用い,1)4週間無処置の群(対照群),2)4週間ギプス固定を行う群(固定群),3)4週間ギプス固定を行い,その過程で週5回の頻度でギプスをはずし,15分間振動刺激を負荷する群(振動刺激群),4)4週間ギプス固定を行い,その過程で週5回の頻度でギプスをはずし,15分間疑似的に振動刺激を負荷する群(プラセボ群)の4群を作成した.ギプス固定はラット足関節を最大底屈位の状態で行い,振動刺激は振幅幅3mm,周波数20Hzで麻酔したラットの下腿後面に負荷した.実験終了後は,麻酔下で足関節背屈角度を測定し,その後,摘出したヒラメ筋を検索材料に中性塩,酸,ペプシンそれぞれによる可溶性コラーゲンを定量した.なお,本実験は星城大学が定める動物実験指針に準じて行った.
【結果】 4週間後の足関節背屈角度は,対照群に比べ固定群,振動刺激群,プラセボ群は有意に低値で,この3群間では振動刺激群が固定群,プラセボ群より有意に高値を示した.次に,中性塩,酸による可溶性コラーゲンは全ての群間に有意差を認めなかったが,ペプシンによる可溶性コラーゲンは対照群に比べ固定群,振動刺激群,プラセボ群は有意に低値で,この3群間には有意差を認めなかった.
【考察】 可溶性コラーゲンの結果をみると,ペプシンによるそれは対照群に比べ固定群,振動刺激群,プラセボ群は有意に低値で,このことは先行研究によれば,コラーゲン線維に強固な分子間架橋が生成されたためと考えられる.また,固定群,振動刺激群,プラセボ群の3群のペプシン可溶性コラーゲンは有意差を認めず,このことから,振動刺激は分子間架橋の生成抑制に効果がなかったと推察される.ただ,足関節背屈角度の結果をみると,振動刺激は関節拘縮の進行抑制に効果があることが窺われ,今後は筋線維自体に対する影響など,関節拘縮の他の病態に対する影響についても検討していきたいと考える.

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© 2005 日本理学療法士協会
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