理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 492
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理学療法基礎系
外乱床回転性振動刺激による姿勢保持能力の検討
*前田 佑輔田中 敏明白銀 暁大山 陽平中島 康博敦賀 健志伊福部 達
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抄録

【目的】
動的条件下でのバランス評価は、より積極的な日常生活活動に関連する評価として重要であるが困難を要する評価でもある。その一手段として外乱床振動刺激による分析がある。そこで本研究では四肢・体幹の筋電図解析および三次元動作計測を実施することにより、矢状面及び前額面での回転性外乱刺激による姿勢制御戦略を検討することを目的とした。

【方法】
対象は健常若年者10名(平均年齢23.4±2.2歳)とした。VICON512、モーションベース、筋電計、デジタルビデオを用い同期計測した。モーションベースによる外乱刺激は前後傾斜、左右傾斜の4方向とし、刺激強度は3.8°、7.5°、15°の3段階であり、刺激時間は全て400msとした。被験者に対して、数回の練習を行った後12通り(4方向×3刺激強度)の試行をランダムに呈示し測定した。三次元動作解析におけるマーカー部位は、頭部、体幹、骨盤帯、股関節、膝関節、足関節とし、各々の角度変化を静止立位時から外乱終了時までの角度変化ピーク値として算出した。動作筋電図学的分析(BIMUTAS2)は、前脛骨筋、腓腹筋、大腿四頭筋、大腿二頭筋、中殿筋、腹直筋、脊柱起立筋群について計測した。筋電図解析に関しては外乱刺激中(0-400ms:第1期)及び外乱刺激後(400-800ms:第2期)について、筋電位ピーク値と積分値を算出した。

【結果】
刺激強度の3種類に関しては同様の傾向が認められたため、本紙面においては15°での結果を記載する。
ピーク値から、後方傾斜において第1期では腓腹筋が他の6筋群に比べ筋活動が1.5~3倍大となった。第2期においては腓腹筋の活動に変化はなく、第1期に比べ前脛骨筋群のピーク値がほぼ2倍の活動を示した。前方傾斜においては、第1期では前脛骨筋に大きな活動が見られ、第2期において、腓腹筋の活動がほぼ2倍となった。
左右傾斜について、積分・ピーク値とも右側降下では左側の筋群が大となり、左側降下では右側の筋活動が大となった。特に腓腹筋、前脛骨筋、脊柱起立筋、中殿筋において左右差が大となる傾向となった。大腿二頭筋、大腿四頭筋、腹直筋に関して、全試行を通して10%未満の活動量となった。
角度変化ピーク値に関して、前方傾斜では足関節底屈、後方傾斜では足関節背屈が主たる動きとなり、右傾斜においては体幹左側屈、左股関節外転、右股関節内転が生じ、左傾斜においてはその逆の動きが生じた。

【考察・まとめ】
本実験の外乱刺激後において筋活動及び関節運動範囲から足底面への回転刺激に関して、矢状面においては足関節周囲筋群中心でのバランス維持を実施しており、前額面においては足関節ついで体幹、股関節に主な活動が認められた。これより回転性外乱刺激におけるバランス戦略は、従来の線形性外乱刺激におけるバランス戦略とは異なる様相を呈する可能性が示唆された。

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© 2005 日本理学療法士協会
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