理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 502
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理学療法基礎系
ラット膝関節拘縮モデルを簡便に作成する方法の試み
*松崎 太郎細 正博武村 啓住由久保 弘明小島 聖渡辺 晶規立野 勝彦
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キーワード: 関節固定, ラット, 関節拘縮
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抄録

【背景および目的】
近年,関節拘縮について関節内部の変化を調査した研究が見られるが,外科的侵襲を伴うものや固定範囲が大きく手技が比較的煩雑であるなどの問題点があるものが多い。今回の研究の目的は,ラット膝関節を固定して拘縮モデルを作成するにあたり,手技が簡便な方法を考案すること,ならびにその方法での関節固定で生じた関節構成体の変化を病理組織学的に観察することである。
【対象と方法】
対象として9週齢のWistar系雄ラット6匹(体重240g-280g)を用いた。対象を麻酔後,アルミ製金網で自作した固定用器具を用いて左後肢を膝関節最大屈曲位にて固定し,股関節と足関節は固定の影響が及ばないように留意した。その後2週間飼育し,膝関節屈曲拘縮モデルを作製した。固定期間中,右後肢は自由とし,ラットはケージ内を移動でき,水,餌は自由に摂取可能であった。固定期間中は創と浮腫の予防に留意し,また外れた場合には速やかに再固定を行った。ギプス解除直後に膝関節伸展可動域を測定し,エーテル麻酔で安楽死させた後に,股関節を離断し標本として採取した。対照として右後肢も同様に標本とした。採取した後肢をホルマリン液にて組織固定後に脱灰し,膝関節の切り出しを行った後に中和,パラフィン包埋を行い,ヘマトキシリン・エオジン染色を行ない光学顕微鏡下で関節構成体を病理組織学的に観察した。
【結果】
本手法においては1匹あたり約5分程度と簡便に固定可能であった。膝関節可動域は実験開始時には差は見られなかったが,2週間の関節固定により実験終了時では対照と比較して約30゜の伸展制限が生じた。また,体重の変化は実験開始時と比較して実験終了時には平均13.1g増加していた。病理組織学的観察では,実験側において関節腔内に向かって周囲の滑膜様組織から線維増殖が生じていた。増殖した組織が大腿骨と癒着しているものも観察された。大腿骨と癒着が生じている部分においては大腿骨の関節軟骨の欠損が観察され,関節軟骨表面に膜様組織が出現しており,組織中では微小血管の増生が見られた。大腿骨表面の膜様組織が癒着した部分が断裂したと考えられる標本では断裂部に出血および炎症細胞浸潤が観察された。
【まとめ】
今回の実験では固定期間が2週間と比較的短くても関節構成体の変化は顕著であった。この手法によって関節を簡便に固定でき,拘縮モデルを作製して実験を行っていく事は有効である事が示唆されたが,今後、固定期間等を考慮して更なる検討が必要である。

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© 2005 日本理学療法士協会
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