理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 503
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理学療法基礎系
変形性膝関節症(OA)動物モデルのアライメントの検証
*岡田 要一郎金本 嘉史野村 義宏渡部 睦人
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抄録

【目的】我々理学療法士は、臨床において膝OA患者が可動域制限やアライメント異常を呈している事を確認している。また、温熱を中心とする物理療法や関節可動域回復訓練(ストレッチ、モビライゼーション)、SLR(下肢挙上)訓練などにより症状の軽減が見られることも経験している。そこで今回は、膝OAの研究に有用な自然発症型膝OA動物モデルであるDunkin Hartleyモルモットと、膝OA発症の報告が少ないWisterラットを比較し、両者の膝関節アライメントの違いからOAにつながる原因、さらにはOA発症のメカニズム解明につながればと考え検証を行った。
【方法】Dunkin Hartley系モルモット及びWister系ラット(オス、6週齢)を用いた。膝関節伸展角度は、1)麻酔下の生体時および2)腓腹筋切除後の左膝関節で測定を行った。足関節を90°で固定し、膝関節角度を外側から測定した。腓腹筋は起始から停止腱まで切除後、筋重量を測定した。摘出した筋は、凍結粉砕し、脱脂した後、4Mグアニジン塩酸で可溶化し、可溶性画分と不溶性画分に分画した。両画分を塩酸で加水分解し、アミノ酸分析に供した。また、右後肢の股関節から足関節までを摘出し、全ての軟部組織を取り除き骨標本を作製した。
【結果】膝関節伸展角度は、生体時ではモルモットよりもラットの方が大きく28°の差があった。腓腹筋切除後はどちらも伸展角度が増加した。増加した角度は、モルモットで30°に対し、ラットで20°と角度変化は小さく、10°の差を認めた。腓腹筋重量は、体重比に換算すると有意にモルモットの方が小さかった。アミノ酸分析の結果、モルモット腓腹筋抽出物の不溶性画分中ヒドロキシプロリン量の割合が有意に高値を示した。モルモットおよびラットの大腿骨関節面は、ともに膝蓋骨関節面が大きく窪み、膝蓋骨が密着する構造であった。ヒトの大腿骨関節面と異なり、脛骨の接する面と膝蓋骨の接する面が完全に分かれていた。膝蓋骨は、モルモットの方が縦方向に長く、膝蓋骨関節面の75%を占めていた。
【考察】モルモット及びラットでは、膝蓋骨の影響により脛骨伸展に対する骨性の制限が生じていると考えられる。モルモットにおける伸展角度の減少は、骨構造の点に注目すると膝蓋骨の構造によるものと考えられる。腓腹筋については、切除後の可動域変化がモルモットで大きいことからも、モルモット腓腹筋の伸張性が低いことが推測できる。さらに伸張性の低下は筋中コラーゲン量に由来する事が考えられる。このことから、OA発症の原因が骨性の伸展制限、腓腹筋のstiffnessが異なることに起因するものと推測できる。以上より理学療法として筋へのアプローチが有効である可能性が示唆された。今後、筋に対し理学療法手技を施行し、OA発症に違いが見られるかを検証していく予定である。

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© 2005 日本理学療法士協会
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