理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 513
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理学療法基礎系
リフティング動作時における体幹筋の筋活動について
―持ち上げ重量が分からない場合(第2報)―
*平木 清喜狩山 信生松田 友和河端 久美子西 真理野崎 寛子浦田 恵表 幹也魚住 和代神谷 正弘
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抄録

【はじめに】前回の学術大会において,持ち上げ重量が分からない場合に重い物を持ち上げた後に軽い物を持ち上げると「構え」という現象が起きたことを考察し,リフティング動作時には重量の確認と「構え」が大切であると報告した.そこで今回我々は,軽い物を持ち上げた後でも「構え」という現象が起きるのかを持ち上げる順番を逆にして検討したので報告する.
【対象と方法】対象は過去1年以上腰痛の既往がない健常成人10名(男性5名,女性5名)で平均年齢22.0±2.4歳であった.被験者は測定に先立ち背筋力計を用い最大等尺性随意収縮(以下MIVC)時の筋力を測定し,10%・35%重量を算出した.その後,重量が分からないようにダンボール箱に詰め1秒間で持ち上げ,2秒間保持し,1秒間で元の場所へ下ろすことを1回としたリフティング動作を体幹屈曲45度から0度の範囲で連続して行った.初めに10%重量で行い休憩後35%重量で行った.なお被験者には下肢の筋力は使わないよう指示し重量についての情報は一切提示しなかった.
 被験筋は多裂筋と脊柱起立筋とし,表面電極からの筋活動電位をホルター筋電計ME3000(Mega社製)に記録した.解析ソフトMega Win(日本メディックス社製)を用いて10%重量と35%重量のリフティング動作の動作前と動作中の1回目,2回目,3回目の筋電図積分値(以下IEMG)を算出し,MIVC時のIEMGで正規化した%IEMGを用いて比較検討した.
【結果】動作前の比較では,多裂筋が10%重量で39.4±15.4%,35%重量で44.5±17.8%,脊柱起立筋が10%重量で32.4±13.6%,35%重量で36.5±18.4%で両筋ともに有意差は認められなかった.動作前に対する1回目の増加率は,10%重量では多裂筋が2.2倍,脊柱起立筋が2.3倍,35%重量では多裂筋が3.1倍,脊柱起立筋が3.1倍であった.
【考察】前回,重い重量物を持ち上げた後に次の重量物を持ち上げる場合,動作前に筋活動量が増加した状態の「構え」が認められた.今回,軽い重量物を持ち上げた後に次の重量物を持ち上げる場合,動作前の筋活動量に有意差が認められなかったのは予測した重量と経験した10%重量に大きな差がなかったことと,ダンボール箱の大きさが同じだったことから35%重量の動作前に10%重量に対応した「構え」となったからだと考える.その結果,35%重量の1回目では両筋ともに動作前の筋活動量と比べて高い増加率を示し,「構え」としては十分なものではなかったと考える.今回と前回の結果から,実際に持ち上げる重量と予測した重量とに大きな差がある場合には,筋活動量が急激に増加するため筋への負担も大きくなることが示唆された.よって,リフティング動作時には重量に対する適した「構え」を取ることが必要であり,腰痛予防に役立てていきたい.

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© 2005 日本理学療法士協会
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