理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 655
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理学療法基礎系
modified Ashworth scaleの検者間信頼性に関する研究
―5名の検者間一致率による臨床的有用性の検討―
*中山 恭秀長谷川 光久鳥居 久美子川井 謙太朗木山 厚宮野 佐年
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抄録

【はじめに】modified Ashworth scaleの検者間信頼性に関する報告で2名以上の測定者間での信頼性に関する報告は少なく、Sloan(1992)の2名の理学療法士と医師、計4名で測定した報告が最多である。ここでは肘関節屈筋群の測定で.56~.76と高い順位相関があると報告しているが、一致率は示されていない。国内において3名以上で一致率を検討した報告はない。
【目的】5名の理学療法士でmodified Ashworth scaleを用いて肘関節屈筋群の痙縮を測定した際の検者間一致率を求めることである。
【対象】当院に入院及び外来通院している患者で、検者全員が0(筋緊張増加無し)と判断しなかった23名25肢(平均年齢67.4歳、42~83歳)を対象とした。測定は肘関節屈筋群とした。なお、本研究は当大学倫理委員会の審査を受けた後に患者の同意を得て施行した。
【方法】5名の理学療法士(経験年数3~13年、平均7.3年、男性4名、女性1名)で、測定前にBohannonらが定める方法を確認した。測定は、対象を背臥位とし充分可動域運動を行なった後にランダム測定をした。1秒間かけた肘伸展運動を5回行ない、その場で各自が結果を記録した。評価期間中の情報交換は禁止した。分析は5名の測定者間計10通りの組み合わせの一致率と順位相関係数を求めた。一致率はWeighted kappa(重み付け係数0-9)を用い測定誤差の幅を配慮した。順位相関係数はSpeamanの順位相関係数を用いた。
【結果】10通りの検者間一致率は、.78~.53、平均.68であった。Speamanの順位相関係数では、.88~.69、平均.82であった。完全一致率は.72(18/25)~.32(8/25)、平均.46(11.6/25)であった。2グレード以上の評価結果の違いが生じたものは、250個(25肢×10通り)のデータ中11個(発生率4.8%)であった。
【考察】順位相関は高く、Weighted kappaによる各検者間の一致率及び平均一致率も高かったことにより、modified Ashworth scaleは検者間信頼性が高く、他の順序尺度評価方法と比べても十分臨床的有用性を備えるといえる。しかしこれは高い完全一致率によるものではなく、2グレード以上の評価結果の格差を生むことが極めて少ないという高い信頼性であることは臨床上注意すべきであろう。modified Ashworth scaleは世界的に広く利用されている評価方法であるが、未だ十分な検証がなされているとはいえない。今後の課題は他の筋群、特に下肢の測定における検証で、測定精度が上肢と比較して低いとされていることにある。今回と同様に、複数検者において一致率の検討をする必要があると考える。

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© 2005 日本理学療法士協会
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